以下に、調査の経緯の概要及び調査項目の選択過程を記す。
1)第1回WG会議(8月7日)
1)文献調査の結果と空中写真判読をWG会議に報告し、WG委員からご指導を受けた。
2)その結果を受け、P波探査測線位置やボーリング掘削位置及び今後の調査の進め方を議論した。
3)P波探査測線の選定に関する議論を以下に記す。
亀岡盆地を横断して山地部に至る測線が必要で、亀岡市千歳町から河原林町のルート(長さ約3km)は、文献(36)記載の盆地最深部を通り、盆地全体の地下構造が把握できる。また、平成8年度京都府(3)が実施した調査結果が活用でき、最適である。次候補として、千歳車塚古墳測線が挙げられた。
2)第2回WG会議(9月17日)
1)第1回WG会議で討議された亀岡断層の変位地形箇所とP波探査測線の状況を現地で調べた。
2)変位地形の見方と想定活断層線の位置について、岡田・東郷・堤の各WG委員から説明があった。
3)現地調査終了後、京都大学で竹村委員を交え、変位地形の認定と活断層位置等の情報をまとめ、P波探査測線位置を議論し、「千歳車塚古墳測線」より「亀岡市千歳町から河原林町」測線が有効と判断された。
4)今後実施予定されているボーリング調査箇所については、堆積物の厚い断層下盤側を想定するが、詳細はP波探査結果(反射断面)を見て検討することが、確認された。
5)ボーリング深度数量については、複数の短いボーリングより、1本で100m 以上のボーリング掘削が、P波探査で現れた地層確認には、有効と判断された。
以上の検討結果を第2回京都府活断層調査委員会に提案することが決まった。
3)第2回京都府活断層委員(9月18日)
1)第2回WGで検討された亀岡断層の位置や活動性及びその後の東郷委員による空中写真再読結果が報告された。
)文献と地形情報に関する議論がなされた。議論の後、P波探査測線位置と工程及びボーリング調査候補地や掘削深度について意見が交わされた。
3)亀岡盆地に分布する活断層や地質構造の把握、断層の位置、断層・撓曲の状況把握を目的に、P波探査を実施する。測線位置は亀岡市河原林町から千歳町までの桂川堤防から山麓までの長さ約3kmが、決定された。
4)P波探査測線に近接する地点で、P波探査で現れた地層の実体を調べるためのボーリング調査を行う。そして、P波探査とボーリング調査を合わせ、亀岡断層の活動性を評価する。既往ボーリングでは岩盤までの深度は約170mであり、深尺ボーリングが望ましいとの要望があった。
5)本年度調査から得られた盆地に伏在する断層や地質構造を踏まえ、亀岡断層の最新活動時期、活動間隔などの解明のための次年度調査の手法についての意見交換がなされた。
4)第3回WG会議(11月29日)
1)P波探査結果を基に、亀岡盆地に伏在する断層や地質構造が議論された。反射波の特徴から基盤岩の分布と被覆する大阪層群相当層の構造が検討された。
a.反射断面から、断層は西からF1、F2、F3断層と3本見つかった。F1断層は従来知られていないもので、平野下に伏在するものである。F2断層はリニアメント近傍で、F3断層は山麓の断層に対応すると判断された。
b.F2断層は変位量が大きく、ボーリング調査対象であると判断された。
c.F2断層下盤側で被覆層の層厚は約400mに達し、当初の予想を大きく超えた。
2)F1断層を構成する地層やその年代を推定する資料を得るため、下盤側CMP158(亀岡市農業公園)付近で、反射面B−Cの層準(深度160〜180m)までのボーリング掘削が提案された。
3)来年度の活断層調査(S波探査、ボーリング調査、トレンチ調査)に加え、本年度の測線より北側でのP波探査及びF1断層上盤での基盤までのボーリング調査が必要であるとの議論がなされた。
5)啓蒙活動(平成15年2月15日)
調査地区である亀岡市河原林町付近の住民を対象に、資料を配布し、本調査の目的や得られた成果の一部と地震全般に関する啓発を尾池委員長、竹村委員が行った。また、ボーリングコアについても展示した。参加者は約85名であった。
6)コアの観察(平成15年2月15日)
尾池委員長、竹村委員がボーリングコアを観察され、地質構成や含まれる火山灰の観察から地質層序や解析方針について、以下のご教授とご指示を頂いた。
1)深度10mまでは、ルーズな堆積物で沖積層と推定される。
2)風化砂岩礫の混入状況から、深度36m付近に地層境界が推定される。
3)36m以深は締まりの状態等から大阪層群相当と思われる。
4)分析すべき試料が少ない。
以上の地質観察から、以下の調査方針が示された。
a.下位の粘土層を対象に古地磁気測定で、逆帯磁の有無を調べる。
b.京都盆地との比較で、シルト?粘土層は大阪層群Ma9相当の可能性がある。Ma9の特徴は温暖な花粉組成であることから、シルト?粘土層を対象に花粉分析を行う。
c.炭素年代測定試料や肉眼で識別できる火山灰試料が見当たらない。
d.従って、礫層間の細粒物質を火山灰分析し、既知広域指標火山灰との対比で年代値が得られる可能性がある。多数の試料で火山灰分析を行う。
このような調査方針を基に、具体的な試料採取位置と数量を策定し、コア写真とボーリング柱状図を添付して、ワーキング委員に伝えた。ワーキング委員の了解を得て、その後分析を行った(表2−1−1、表2−1−2)。
7)第3回京都府活断層委員会(平成15年3月19日)
本年度調査結果と次年度調査計画が審議された。
1)調査結果の概要
P波反射法地震探査結果、ボーリングから得られた地質構成と地質層序、年代に関する試料分析結果を委員に提示し、ご指導とご検討を頂いた。さらに、断層の分布、最新活動時期、上下平均変位速度の概要についても議論、ご指導頂いた。得られた結論を以下に、列記する。
a.断層の分布について
P波探査から、盆地には西からF1断層とF2断層帯及びF3断層帯がある。F1断層は平野地下に伏在する断層で、累積変位が認められる。他断層の累積性については、本調査では確定できなかった。
b.F1断層の長さについて
既往の重力探査(36)を参考にするとF1断層は、盆地内の亀岡断層に相当する可能性がある。本調査では断層両端の情報が得られなかったので、長さを確定することはできなかった。
c.F1断層の最新活動時期について
反射断面では、地表から地下にA−Eの反射面が識別できる。反射面Aはボーリング調査から、約7千年前以降の沖積層基底面に相当する。反射面Aには、10mを越える変位・変形は認められない。2万年前の低位段丘は最大約5mの変位を受けている(6)ので、仮に反射面Aが変位しているとしても数mであろう。このような微細な変位は、今回の探査の分解精度では把握できない。従って、低位段丘の変位・変形から2万年前以降に活動したことは確かであるが、最新活動や活動履歴については本調査で確定できなかった。
d.F1断層の活動度について。
反射面Bはボーリングコアの観察や試料分析及び京都盆地のP波探査との比較、検討から大阪層群海成粘土Ma9上部(約36〜40万年前)に相当する可能性がある。F1断層で反射面Bは約55mの変位・変形を受けているので、B級下位の活動度が推定できる。段丘の変位からもこの活動度ランクは支持される。
2)次年度調査について
本調査結果を踏まえ、事務局から馬路付近と馬堀付近の2箇所のP波探査、S波探査及びボーリング調査(試料分析を含む)が、提案された。
議論では、馬堀付近では伏在断層が見つからない可能性があり、調査箇所としては不適当であり、馬路付近での調査が望ましいとの意見があった。調査結果を活用できる今年度の測線付近も調査候補として有効であるとの意見があった。この他、テストピット調査などの調査手法等も検討された。
次年度の調査方針、地点については、来期委員会でより詳細な議論を行うことが決まった。
(d)調査フロー
本調査の流れを表2−1−3に示す。
表2−1−3 調査フロー
(e)調査地点及び調査範囲
調査範囲を図2−1−1に示す。また、物理探査の調査範囲(測線位置:亀岡市千歳町から河原林町を経て、桂川堤防までの東西測線)を図2−2−2に、ボーリング調査地点(亀岡市農業公園)を図2−1−3に示す。