7−1 トレンチ調査方法

活断層の性質や活動史をより詳細に研究するために、トレンチ掘削による活断層の調査法が取り入れられ、多くの成果をあげてきた。現在、最も一般化した詳細な活断層調査法である。

 この調査法とは、断層が通っている場所に調査溝(トレンチ)を作り、そこでの断面や平面の観察を通して、断層周辺の地層の変形や堆積状態などから過去の断層運動を解読する方法である(図7−1)。さらに、地層の中から年代に関する情報(木片や貝殻片や土器片など)を採取し、断層運動を解読していく方法である。このようなトレンチ調査は次のような利点がある。

(1) 調査に適切な場所で最良の方法によって断層を掘り起こすことができる。最新の堆積物までを切断するような活断層露頭が自然の作用で形成されたり、人工的に偶然作られたりすることは、極めて希であるので、人為的に適切な断面を作る必要がある。

(2) 詳細な露頭観察や記録を取ることができる。断層の変位を解読し、堆積物の年代決定により地層の堆積年代が明らかとなり、ひいては過去の地震の年代が明らかになる。

(3) 調査実行に必要な時間が明確なので、計画的に調査が実行できる。

ところで、トレンチ調査による活断層調査の主目的は次頁の様な項目を明らかにすることにある。

1)断層運動(=地震)の発生時期とその間隔

2)各々の地震に伴う断層運動の向きと量

 1)については最新の地震発生時期を解明し、さらにその前の地震時期、さらにその前の前の地震時期へと究明していけば、ある活断層に沿う活動間隔が判明してくる。そして、その断層が固有の再来周期を持っているのか、持っていないのかが明らかになる。最新の時期がわかれば、活動間隔から判断して、現在が活動の予想される要注意の期間に達しているのか、いないのかをおおよそ知ることができる。

 しかし、このような予測には、数十年〜数百年程度の誤差を伴うのが一般的であるが、長期的な観点での環境評価にとってこれは実に重要である。

(2)(3) は、活断層から発生する地震の規模と活動区間を予想するうえで重要である。1回の地震で動く断層の区間と変位量がわかれば地震の規模が計算できる。しかし、この方法もあらゆる活断層に対して万能ではなく、過去の地震発生が1ヶ所の調査ですべて判明するとは限らないからである。(以上、岡田篤正;トレンチ法による活断層調査の現状と展望より抜粋、一部改変)