5−5 神吉・越畑断層

○越畑盆地地域(図5−14図5−15図5−16

 越畑盆地は地蔵山、三頭山の西側に南北方向の崖があり、その西側に西高東低の傾動地塊があって、南北に細長い断層角盆地をなしている。当盆地西方、亀岡盆地に分布する亀岡断層も三俣川を境に南側では南北に近い走向を示し、当盆地もそれと対になっている様子を示している。地表の高度は340〜460mを示し、亀岡盆地よりも200m以上も高い標高を示す。当盆地部は中・高位段丘が西側に分布し、その東部には、東側の山地から供給された崖錐的な堆積物によって扇状地が分布している(写真25)。その崖錐堆積物中には風化を受け茶褐色化した、姶良Tn(AT:約2.5万年前)火山灰と大山生竹(DNP:約8万年)火山灰が挟まれている(写真26写真27)。当盆地部における中位段丘と扇状地は神吉・越畑断層の変位によって西側への傾斜が割に急な為に、段丘面、扇状地面の開析が進み、狭い範囲で分断されている。

 当盆地北部に位置する神吉盆地から越畑盆地の東縁にかけて、推定活断層が分布する。当地域において断層の走向は南北を示し、約1.5kmにわたって、扇状地および中位段丘面を変位させている(写真28写真29写真30写真31写真32写真33)。これは表層の地層を切るような様子は見られなく、東側隆起のたわみとして認められ、活撓曲崖とされている(植村,1988)。この活撓曲は東側山麓付近と盆地中央部に2本併走するように、東側隆起3.7〜20mを示している。更に、原地区の西端部には東落ちを示す、長さ300m程度の撓曲崖も併走している。撓曲崖と開析された谷部が交わるところは湧水が数カ所認められ(写真34)、竹林の植生も目立っている。当地域の撓曲崖の南東方向延長は西側隆起の樫原断層に連なる。

 また、原地区の西部の谷中において、中位段丘面中の断層露頭が踏査により発見され(写真36)、1/10スケールのスケッチを行った。この断層露頭のスケッチなどの記載に付いては、この章の最後に掲載する。

○越畑盆地地域(図5−14図5−15図5−16

○神吉盆地地域(図5−17図5−18図5−19

 神吉盆地は越畑盆地と方向が異なり、北西−南東方向に盆地が延びる、西高東低の断層角盆地である。盆地の北東部には千歳山や鎌ヶ岳といった標高500〜600m以上の山並みが連なり、盆地東縁部と山地部はやや直線的な境界を見せる。西縁部の山並みは350〜450mの山体が盆地側に不規則に小尾根を突き出しているため、盆地部はいくつかのクビレ部をもつような形になっている。盆地部のほとんどは盆地中央部まで緩やかな斜面を形成している低位段丘面で占められていて、山麓部は背後の山地部から供給されたと考えられる扇状地が細長く分布する(写真37写真38写真40写真41)。推定活断層は不明瞭ながら東盆地東縁山麓部に北西の走向を示しながら直線的に分布する。また、北東側の山地には変動地形に特徴的な風隙谷が数カ所確認できる(写真39)。当推定断層北西方向延長は左横ずれ変位を伴う殿田断層に連なる。