・ 独鈷山地区、坪井四丁目付近および海域で沖積層を変位させているので、完新世に活動している。独鈷山地区では、それは約 5,700 年以降である。
2.2 変位量と平均変位速度
・ この断層による各地層の変位量は堆積時前後の地形の凹凸の程度が明らかでないため、詳細には決めがたいが、断層両側での地層の分布の高度差を垂直変位量とみなした場合、おおよそ以下のようである(表3−5−1−1、表3−5−1−2)。
@ 金峰山火山岩類 13 m(独鈷山)〜52 m(麻生田)
A Aso−3・4 間堆積物 13 m(熊本城)
B Aso−4 火砕流堆積物 13 m(熊本城)〜31 m(麻生田)
C 保田窪砂礫層 5 m(黒髪町駅付近
D 8,090 年前の地層 4 m(独鈷山)
E 5,700 年前の地層 0.77 m(独鈷山)
上記の変位量と各地層の年代とから得られる平均変位速度は次のようである(図3−5−1)。
過去約 120 万年間(上記 @ 以降) 0.01〜0.04 (mm/年)
過去約 9〜12 万年間(上記 A 以降) 0.11〜0.15
過去約 9 万年間(上記 B 以降) 0.15〜0.35
過去約 4〜 5 万年間(上記 C 以降) 0.10〜0.13
過去約 0.8 万年間(上記 D 以降) 0.5
過去約 0.6 万年間(上記 E 以降) 0.14
このように、最近約 10 万年間の平均変位速度は 0.1〜0.15 (mm/年)程度(活動度 B 級)である。それ以前の約 100 万年間はそれに比して活動度は約 1 桁小さかった(活動度 C 級)。
2.3 変位量と地震の規模
・ 独鈷山地区での最新活動の変位量は 0.77 m であった。これを一回の活動による変位量とみなす。その場合、松田式によるとそれは M 6.4 の地震規模に対応する。
・ また、この断層全体が一回の地震で活動すると考えた場合、断層の長さから推定される地震の規模 M は松田式によると、6.7 になる。
・ 以上のことから、この断層からの地震規模 M はおおよそ 6.5 程度であったと考えられる。
2.4 平均活動間隔
・ 過去の複数の活動時代を十分に特定できなかったので、この断層の活動間隔を直接明らかにすることはできなかった。
・ 上述の地震規模(M 6.7)と平均変位速度(0.1〜0.15 mm/年)から、松田式(1996)によれば、平均活動間隔は約 1〜0.7 万年になる。
・ しかし、独鈷山地区では 8,090〜5,700 年の間(約 2,400 年間)に 約 3.2 m の変位があり、この間に 0.8 m のイベントが 4 回生じたとも考えられる。この場合には、平均の活動間隔は 800 年程度となり、上記の推定活動間隔と調和しない。
・ 以上のように、活動間隔については今後の調査を待つ。