4−1−2 活動履歴

1 最新活動時期

・田中地区のトレンチや平田地区の露頭で、布田川断層の北側断層が2.2万年のATnを切っていることから、最新活動時期は約2.2万年から6.3千年前である。

2 変位量と平均変位速度

・各地層や地形面の断層両側での高度差を断層の変位量とみなした。以下にその概要を示す。

基準面              高度差        断層種別 場所及び論文

@ 砥川溶岩の上面          80m       鶴田・渡辺(1978)による

A        70m 同 上

B 赤井火砕丘堆積物の下面  80m       益城町赤井〜船野山山麓

C Aso−2火砕流堆積物の下面   4.2m        北側断層 田中地区(ボーリング結果)

D                      40m      南側断層 田中地区(地表踏査)

E                      40.1m以下    北側断層 平田地区(ボーリング) 

F Aso−3火砕流堆積物の下面   1.8m       北側断層 田中地区(ボーリング)

G                      30m       南側断層 三竹地区(地質踏査)

H 高遊原溶岩の下面         122m以下     小森地区(ボーリング,踏査)

I Aso−4火砕流堆積物の下面    50m   杉堂付近

J                       3.65m        北側断層 田中地区(ボーリング)

K M2面堆積物の下面   10.25m       北側断層 田中地区(ボーリング)

L                      4.05         北側断層 平田地区(ボーリング)

M L1面堆積物の礫層   4m         派生断層 平田地区(露頭)

N L1面       5m         南側断層 畑中地区(地形)

O L2面堆積物           0.5m         北側断層 田中地区(トレンチ) 南側低下

P L2面                  5m          北側断層 三竹地区(地形)

Q                      3m          南側断層 畑中地区(地形)

R L2面                   5m           北側断層 田中地区(トレンチ) 右横ズレ

以上の結果、平均変位速度について以下の結果を得た。

過去 15万年〜9万年     (垂直成分)0.27〜1.1m/千年  B級断層

過去 8万年〜2万年 北側断層(同  上) 0.13m/千年    B級断層

過去 2万年以降   北側断層(垂直変位) 0.25m/千年 B級断層

            北側断層(水平変位変位) 0.25m/千年 B級断層

過去 5万年以降 南側断層(垂直変位) 0.15m/千年 B級断層

この結果から布田川断層帯の活動度はB級である。

3 変位量と地震の規模

田中地区のトレンチ資料から、2.2万年から6.3千年の間で、北側断層に5mの右横ズレ変位が生じた。この期間に2〜3回の活動があった。したがって、断層の1回当たりの 水平変位量は1,7m〜2.5mとなる。また、この断層帯の長さ23.5kmから経験式を用いて求められる変位量は2.3m程度である。この結果から、1回当たりの変位量が2m前後とみな した。

また、この断層変位量から推定される地震規模は、松田式によるとマグニチュードM=7.2となる。したがって、この断層帯での地震規模はM=7程度である。

4 活動間隔

この断層帯の活動年代は特定できないが、上述のように2.2万年から6.3千年間に2〜3回の活動が生じているので、活動の間隔は1.7万年から4千年間の値となる。