・田中地区のトレンチや平田地区の露頭で、布田川断層の北側断層が2.2万年のATnを切っていることから、最新活動時期は約2.2万年から6.3千年前である。
2 変位量と平均変位速度
・各地層や地形面の断層両側での高度差を断層の変位量とみなした。以下にその概要を示す。
基準面 高度差 断層種別 場所及び論文
@ 砥川溶岩の上面 80m 鶴田・渡辺(1978)による
A 70m 同 上
B 赤井火砕丘堆積物の下面 80m 益城町赤井〜船野山山麓
C Aso−2火砕流堆積物の下面 4.2m 北側断層 田中地区(ボーリング結果)
D 40m 南側断層 田中地区(地表踏査)
E 40.1m以下 北側断層 平田地区(ボーリング)
F Aso−3火砕流堆積物の下面 1.8m 北側断層 田中地区(ボーリング)
G 30m 南側断層 三竹地区(地質踏査)
H 高遊原溶岩の下面 122m以下 小森地区(ボーリング,踏査)
I Aso−4火砕流堆積物の下面 50m 杉堂付近
J 3.65m 北側断層 田中地区(ボーリング)
K M2面堆積物の下面 10.25m 北側断層 田中地区(ボーリング)
L 4.05 北側断層 平田地区(ボーリング)
M L1面堆積物の礫層 4m 派生断層 平田地区(露頭)
N L1面 5m 南側断層 畑中地区(地形)
O L2面堆積物 0.5m 北側断層 田中地区(トレンチ) 南側低下
P L2面 5m 北側断層 三竹地区(地形)
Q 3m 南側断層 畑中地区(地形)
R L2面 5m 北側断層 田中地区(トレンチ) 右横ズレ
以上の結果、平均変位速度について以下の結果を得た。
過去 15万年〜9万年 (垂直成分)0.27〜1.1m/千年 B級断層
過去 8万年〜2万年 北側断層(同 上) 0.13m/千年 B級断層
過去 2万年以降 北側断層(垂直変位) 0.25m/千年 B級断層
北側断層(水平変位変位) 0.25m/千年 B級断層
過去 5万年以降 南側断層(垂直変位) 0.15m/千年 B級断層
この結果から布田川断層帯の活動度はB級である。
3 変位量と地震の規模
田中地区のトレンチ資料から、2.2万年から6.3千年の間で、北側断層に5mの右横ズレ変位が生じた。この期間に2〜3回の活動があった。したがって、断層の1回当たりの 水平変位量は1,7m〜2.5mとなる。また、この断層帯の長さ23.5kmから経験式を用いて求められる変位量は2.3m程度である。この結果から、1回当たりの変位量が2m前後とみな した。
また、この断層変位量から推定される地震規模は、松田式によるとマグニチュードM=7.2となる。したがって、この断層帯での地震規模はM=7程度である。
4 活動間隔
この断層帯の活動年代は特定できないが、上述のように2.2万年から6.3千年間に2〜3回の活動が生じているので、活動の間隔は1.7万年から4千年間の値となる。