(4)地質構造

(1) 立田山断層

立田山断層は調査地域北東部の清水町麻生田から、立田山北西縁−熊本城北側−花岡山北縁−独鈷山北縁−城山北縁−御坊山北側を通り南西方向に伸びる断層である。御坊山から南西方向の延長については、厚い沖積層に覆われるため未解明な状況にある。後述するように音波探査の結果(V.2.2)によれば、島原湾には複数の活断層の存在が確認されている。もし立田山断層がこれらの断層のいずれかと連続するならば、その延長は、35 km 以上に達するものと推定される。ここでは、北端を熊本市楠五丁目付近、南端を白川河川敷とみなした。その場合の立田山断層の長さは 14.3 km である。

立田山断層の地表における位置は沖積低地で不明となり、金峰山火山岩類、阿蘇火砕流堆積物および段丘堆積物の分布域において、限られた飛び石状の分布を示す。北から順に整理すれば、@ 立田山北〜西側、A 熊本城北部、B 花岡山〜独鈷山の 3 地区である。

@ 立田山北〜西側地域

清水町麻生田から立田山北西縁を経由して黒髪町に至る範囲では、断層露頭が飛び石状に分布していることから、断層位置が確定できるものとして、地質平面図には実線で示した。この区間における断層の延長方向と傾斜は、

清水町麻生田地区では、東−西 58〜80°N (図3−1−16

立田山北縁部で北東−南西方向 63°N (図3−1−15

立田山西縁部で北北東−南南西 70°N (図3−1−13

となり南へ行くにしたがい、東西性から南北性へ伸張方向を変化させている。また、その傾斜は全て北傾斜である。

黒髪駅町から西方の延長については、地形判読結果によるリニアメントと熊本城北側の断層に至る連続性(推定延長方向)が異なることから、断層が2条に枝分かれする可能性があり、地質平面図には、推定断層として示した。また、熊本城北部へ連続することから、立田山断層は黒髪町駅付近で南北性から東西性へ方向を転じるものと推定される。

A 熊本城北部

熊本城北部の断層は台地面に明瞭な段差を生じさせ、特に藤崎台球場の北側崖面に代表される。地表面で観察される断層露頭は、Aso−4 火砕流堆積物を切る小断層群であり、走向・傾斜 N 70°E・70〜90°N(図3−1−11)を示す。断層露頭における直接的変位は不明であるが、地形情報を加味して考える限り、北傾斜の断層と判断され、@の立田山の西側地域における性状と同じである。

B 花岡山〜独鈷山

花岡山から独鈷山に至る地域には、米軍写真を使用した写真判読の結果、複数のリニアメントが判読されている。しかしながら人工改変の影響もあって、現地では直接に断層の位置を確定するような、露頭および変位地形は確認できなかった。その他の状況(電気探査)を考慮して、花岡山〜独鈷山〜城山の北縁を通過するものと判断した(地質平面図には、推定断層として示した)。また、リニアメントはいずれも北傾斜であったことから、断層の運動も北側低下と考えられ、北部の性状と同様である。

(2) その他の断層

調査地域には、立田山断層の他に F−1〜F−3 の 3 つの断層の存在が推定されている。これらの断層は、いづれも空中写真判読により、活断層の疑いのあるリニアメントとして判読されたものである。以下にそれらの断層について整理した。

F−1 断層

F−1 断層は熊本市北西部の京町台地の徳王町の徳王配水池北側を東北東から西南西に走る推定断層である。空中写真の判読では明瞭なリニアメントが京町台地上では認められる。しかしその西側あるいは東側への延長は不明瞭となる。現地観察では、F−1 断層を挟んだ面の標高差は約 3〜5 m で、北側低下である(写真3−1−23)。

F−2 断層

F−2 断層は熊本市北西部京町台地の南側を北東から南西に走る推定断層である。空中写真の判読では京町台地の中央部で明瞭な、北東から南西方向へのリニアメントが認められる。しかし、京町台地上のリニアメントの南西延長は次第に不明瞭となる。北東部延長では約 4 m の段差が認められ、沖積層により不明瞭となる。現地観察では、F−2 断層を挟んだ面の標高差は 1.5〜4 m で、北側低下である(写真3−1−24)。

F−3 断層

熊本市東部の白川の左岸を北東から南西に走る推定断層である。空中写真の判読では明瞭なリニアメントが判読される。このリニアメントは南西部では託麻高位面と保田窪面の境界と一致するが、北東部では託麻高位面の中を通過している(写真3−1−4)。