(1)地形区分

熊本市周辺地域の地形は、大きくは山地、台地、段丘、低地に分けられる。熊本市西部には金峰山地、北部から南西部にかけて立田山地・花岡山・万日山・独鈷山・城山・御坊山などの小山地が、南部には低地が分布し、その間には台地と段丘が広く分布している。地形分類の凡例を表3−1−4 に、地形判読図を図3−1−2−1図3−1−2−2図3−1−2−3 に示す。

表3−1−4 地形分類の凡例

(1) 山地

金峰山地は主峰 金峰山(標高 665 m)をはじめ、これを取り巻く二ノ岳(685 m)、三ノ岳(681 m)等を含む山地である。中央部やや南よりに直径 3 kmのカルデラがあり、カルデラ内に生じた金峰山とその周囲の外輪山に分けられる。金峰山は安山岩の溶岩円頂丘で、山体の高さは約 400 m、基底直径は約 2 km である。外輪山は二ノ岳や三ノ岳等からなる山地で、複雑な起伏と多くの峯を有する。

熊本市市街地北部から南西部にかけては、立田山地(標高 152 m、126 m の竜田山、岩倉山等を含む山地)、花岡山(133 m)、万日山(134 m)、独鈷山(118 m)、城山(50 m)、御坊山(40 m)の小山地が点在している(写真3−1−1)。これらの小山地は外輪山とは分離しているが、地質的には外輪山と同質の安山岩質熔岩、火砕岩およびその二次堆積物から構成されている。すなわち、これらの小山地はもともと金峰火山として形成されたものが、その後の立田山断層の運動ならびに浸食作用の結果、互いに分離したものと考えられる。なお、北部の立田山地から南西方に向かって、山地の規模や高度が小さくなっているとともに、これらの小山地は、金峰山に対し凹面を向けるように連続しているのが特徴である。

(2) 火砕流台地

台地は形成過程の差異により、1 火砕流台地、2 高位段丘性台地、3 溶岩台地 に分けられる。これらの内、溶岩台地は東方の高遊原付近に広く分布する。また、高位段丘性台地は本調査地には分布しないので、ここではふれない。火砕流台地は阿蘇火山が更新世末期に噴出した 4 つの火砕流が形成した台地である。古い方から順に Aso−1、Aso−2、Aso−3、Aso−4 と呼ばれ、それぞれ数万年以上の間隔をおいて活動したもので、各々の火砕流堆積物は阿蘇カルデラ周辺に広く分布している。熊本市周辺地域の地形、表層地質に関係するものでは、Aso−3 および Aso−4 火砕流堆積物からなる台地がある。

Aso−3 火砕流堆積物(Aso−3f)は約 12 万年前に噴出した大規模な火砕流で、白川両岸の段丘崖の下部、立田山の東側に分布するほか、地下浅部に広く分布している。Aso−3 火砕流堆積面は一般に平坦な台地状の地形を呈し、地表部はほぼ平坦で、起伏は少なく、立田山地の北側雨水調整池付近(写真3−1−2)、熊本北高等学校、県林業研究指導所竜田圃場などに分布する。Aso−3 火砕流堆積物はスコリア、黒曜石、軽石、石質岩片などからなり、褐色あるいは赤褐色を呈し、全体に風化している。

Aso−4 火砕流堆積物(Aso−4f)は約 9 万年前に噴出した大規模な火砕流堆積物で、白川の北方 大津町から合志町地域、白川の南方では熊本市東部から益城町北西部にかけて、さらに金峰山東麓から熊本市街北方の京町台地に分布する(写真3−1−3写真3−1−7)。京町台地の南方は地下に埋没している。Aso−4 火砕流堆積物の厚さは 50 m 程度で、全体に非溶結部が大部分で、直径 50 cm 以下の白色あるいは灰色の流紋岩質の軽石を含んでいる。京町台地上面は全体にきわめて平坦であり、厚さ数 m の火山灰が被覆している。京町台地は NE−SW 方向のリニアメントに沿って約 1.5〜5 m の段差が形成されている。これらの段差や分布状況から、Aso−4 火砕流堆積物を 4 つの面に細分できる。しかし、本調査では、一括して示している。これらの Aso−4 火砕流堆積面の地表面はほとんど平坦であり、一般に急崖を有している。そのほか、井芹川右岸に分布する Aso−4 火砕流堆積物は、一部に溶結構造が認められる。金峰山の東側に分布する Aso−4 火砕流の地表面は緩傾斜で、やや傾斜のある金峰山地とは区別され、金峰山地にへばりつくように、標高 20〜50 m に分布する。

(3) 河岸段丘

河岸段丘は、白川の南北両岸(写真3−1−4写真3−1−5)および坪井川沿いに広い平坦面を形成している。この段丘は生成時期により、大きく 2 つに区分される。高位の託麻面、低位の保田窪面である。さらに託麻面についてはその高度差から 2 つに区分される。

託麻高位面(M1)

白川両岸および麻生田付近に広く分布する(写真3−1−5写真3−1−6)。段丘面の分布高度は標高 70〜50 m である。託麻高位面(M1)は九州縦貫自動車道の東側、武蔵ヶ丘付近から西側にかけて、全体に緩やかに西〜北西傾斜する。表面は緩やかな凹凸が認められ、旧河道跡がところどころにみられる。平坦面の外縁部は解析谷の発達が認められる。径 15〜25 cm の安山岩や溶結凝灰岩の礫を含んだ砂礫層からなり、上部は褐色ロームや黒ボク(最下部に姶良火山灰(ATn)が分布する)により覆われている。

託麻低位面(M2)

立田山地の北西〜西〜南部を取り囲むように分布する(写真3−1−7)。段丘面の分布高度は標高 50〜20 m で、全体に緩やかに西側に傾斜する。平坦面の表面は緩やかな凹凸が認められる。外縁部には解析谷の発達が認められる。径 5〜15 cm の砂礫層から構成されており、褐色ロームや黒ボクにより覆われている。

保田窪面(L)

白川の両岸および坪井川左岸に、託麻高〜低位面を取りまくように分布する(写真3−1−4)。段丘面の分布高度は標高 50〜15 m である。段丘面のなかでは最も低い。実際には、これよりさらに1段低い段丘面が読取ることができる。これは高橋(1984)の T5 面に相当するが、今回の区分では低地に含めた。

白川の左岸では、九州縦貫自動車道の東付近から保田窪面(L)が分布する。人工改変により平坦化している。白川右岸でも、九州縦貫自動車道の東付近から、保田窪面が分布し、平坦面を形成している。坪井川左岸でも、保田窪面が託麻低位面(M2)を取り囲むように分布している。大部分が人工改変を受けている。

(4) 低 地

低地は白川下流部、坪井川、井芹川の河谷沿いに分布し、氾濫原、自然堤防、後背湿地等からなる。ここでは一括して沖積面(A)とした(写真3−1−7)。

 

その他に、急斜面の下部に角礫を主体とする堆積物からなる崖錐堆積面が分布する。これには旧期のものと新期のものがあり、各所に分布している。一般に、緩傾斜である。