(2)断層

当トレンチの東側壁(@)では、北側の砂礫層(4 C層)およびAso−4Sと南側の腐植質シルト(4 A層)およびAso−4火砕流堆積物とを境するほぼ鉛直な断層が認められ、断層は耕作土(0層)直下まで達している(図2−4−5−1図2−4−5−2−1図2−4−5−2−2図2−4−5−2−3図2−4−5−2−4図2−4−5−3−1図2−4−5−3−2図2−4−5−3−3図2−4−5−3−4)。

本断層の西方延長は中央部の2m平場で2条に分岐し、西側壁(L)において、Aso−4火砕流堆積物内を通る南側の断層とAso−4火砕流堆積物とそのAso−4Sを境する北側の断層とが認められる。

南側の断層は西側壁(L)および掘り込み中央部壁面(O)では、チャネル堆積物(4 B層)とAso−4火砕流堆積物とを境し、鉛直変位はチャネル堆積物(4 B層)の基底にほとんど変位がないことや断層面の条線から横ズレ変位が推定された。また、4 B層上の3 層基底面は西側壁(F)においては高度不連続は認められない。

北側の断層は東側壁(@)から中央部平場、中央部東側壁(N)を経て、西側壁(L)および西側壁の3層(H)まで追跡され、中央部平場および中央部側壁において砂礫層(4 C層)の基底面に北側隆起約30cm、右横ズレ変位を与えている。

なお、西側壁の2層は北側が低くなるように湾曲しているが、断層は確認されない。この湾曲を断層活動による撓曲とも見えるが、今回の報告書では緩く傾いた斜面と判断し、断層の活動結果とはしなかった。

分岐した北側と南側の断層は、鉛直変位は顕著でなく右横ズレ変位を主体としている。 4 B層が埋積したチャネルの西壁を基準とすると、両断層の合計で約5mの右横ズレ水平変位が観測される。

以上のように、トレンチに見られる断層の活動時期は、3層の下部層の堆積後に及んでいる。しかし2層まで及んでいる可能性もある。一方、4 B層堆積後の変位は主として右ズレであり、その変位量は5mに達している。

なお、砂礫層(4 B層)堆積後の活動については断層が2条に分岐し、南側3層下部に変位を与えていてる。活動は1回の可能性もありえるが、複数回の可能性がもある。

地層相互関係以外では、シルト層を挟在する4 B層に約30゜の地層傾斜が認められ、堆積物から見て異常であり、変形の可能性が高い。この層を4 C層が不整合に覆ている。これは、4 B層堆積後で3層堆積前に断層活動が生じた事を示唆している。

また、Aso−4火砕流堆積物内に4 B層が楔状に落ち込み、これも裂っかに伴い4 B層が落ち込んだもの(裂っか充填堆積物)と推定される。

このような現象は4 B層内では、最下部の礫層とその上部の礫層に発生し、楔状の落ち込みは近接し分布するが、相互に関連はなく独立した存在であり、この楔状の落ち込みのうち最下部のものは、4 B層堆積中に発生したと推定される。