トレンチの位置は、沖積層が厚く、年代が把握しやすい地層が多く、地震イベントの観察可能な所が望ましい。このため、一般に小流域の小沢の出口付近や沖積平野での河跡湖、後背湿地が有力なトレンチ箇所となるとされている。このため、トレンチ調査候補地として赤井火砕丘周辺の沖積層分布地と考えられる木崎、中尾地区、小流域の沢の出口である田中地区、平田地区や沖積地の広い下陳地区、布田地区を選定し検討した。
木崎地区では、沖積層の分布を確認し、層相の変化が多ければ実施も可能と判断されたが、ボーリング調査(1孔)の結果、沖積層に変化がなく均一なため不適当と判断した。
下陳地区は金山川の出口で、河床堆積物に大礫が多く掘削が困難とし取りやめた。
また、下陳地区の一部や布田地区は山脚部であり、掘削と跡地処理が困難と判断した。特に後者は断層位置が明瞭でなく、地すべり地の懸念もあり選定から除外した。
その後、西方の布田川近傍を布田地区とし検討した。この地点も大礫の多い礫層が分布する事や上部の風化火山灰層等で時代決定が困難なため取りやめた。
このため、小沢出口で断層が確実な平田地区とほぼ確実な田中地区で詳細調査を実施した。
田中地区で予備トレンチ、平田地区でピットを実施した。田中地区ではAso−4sやその上部の砂礫層で断層が確認され、平田地区ではAso−4sに撓曲様の構造が確認された。平田地区は、用地が狭い事や層相変化に乏しいため拡大することを取りやめた。このため、断層が確認された田中地区で予備トレンチを拡大し、断層の詳細を調査した(図2−4−1、写真2−4−1、写真2−4−2、写真2−4−3、写真2−4−4、写真2−4−5、写真2−4−6、写真2−4−7、写真2−4−8、写真2−4−9)。
トレンチの規模は、予備トレンチが敷幅0.8m、法勾配1:0.6で実施し、表土付近では幅5.2mであり、その長さは断層が山脚部の近くにあることも考慮し、農道脇から開始し、予想された位置までの25m間とした。断層は22〜23m間に分布し、予備トレンチに50度斜交した走向を示したため、本格的なトレンチは、西方に拡大し実施した。このため本トレンチは図2−4−2に示すまさかり型となり、最深部は深さ約5mとなり、Aso−4を確認し終了した。
掘削は、バックホー2台(0.2m2,0.3m2)を使用し、予備トレンチの表土の掘削と保存、1m深度の掘削と断層の確認、2mの掘削と断層の確認を行った。
断層の分布を確認後、本トレンチとしての拡大には、予備トレンチ分の盛土を移動し、再度、拡大部分の表土剥ぎ、深度1m掘進とスケッチ、深度2m掘進とスケッチの順に行い、その後、一気に5mまで掘進した(図2−4−3、図2−4−4)。
なお、トレンチでの大きな出水、湧水は発生しなかったが、観察期間中に降雨による1.5m程度の湛水が原因で西側壁のAso−4火砕流堆積物の一部が崩壊した。その後の日々の湧水処理は20〜40分程度のポンプ排水で十分に対処可能であった。
トレンチは以下の者が担当した。
掘削管理・・・・・・・市川仁夫・工藤健一
掘削作業・・・・・・・安本政司
トレンチスケッチ・・・中川雅之・郡山政治・大堀健司
トレンチ作業/調査期日
平成8年10月15日〜平成8年12月24日
なお、実施手順は以下の通りである。
(1) 調査用地の決定。地権者の立ち会いにより了解の取得。
(2) 用地平板測量。
(3) トレンチ掘削
3−1) 掘削土保管場所の決定。
3−2) 耕作土はぎ取り。表土の保管。
3−3) 予備トレンチの掘削。
3−4) 予備トレンチ壁の整形。観察スケッチ
3−5) 本トレンチの地権者の了解取得。
3−6) 本トレンチの掘削。
3−7) 本トレンチ壁の整形、観察及びスケッチ。
3−8) 本トレンチの年代測定用試料採取。
3−9) トレンチの埋め戻し、復旧。地権者の立ち会い、復旧状態の確認と了解。
図2−4−1 トレンチ位置図