@ 更新統
1) H面堆積物
H面堆積物は竜北町笹尾から氷川右岸にかけてのほぼ南北方向に連続して分布する。分布高度は竜北町笹尾において標高60m、竜北町大野において標高60〜70m、大野東方および法導寺東方において標高80〜110mである。全般に、分布域を南から北へ向かうにつれて分布高度および面の連続性が低くなる傾向がある。
H面堆積物は宮原花崗閃緑岩を不整合に覆い、その層厚は5〜30m程度と考えられる。本堆積物は長径5〜30cmの礫層であり、おもに中礫および大礫からなる。礫種は花崗岩類、片麻岩類、片岩類、砂岩、チャート、礫岩、頁岩の順で多く構成されている。基質は極めて少量であり、中粗粒砂を主体とする。本堆積物は強風化を受けておりチャート礫を除くほとんどの礫がクサリ礫化している(loc.R2)(写真37)。
2) 未区分洪積層
本堆積物は小川町南小野(loc.O3)及び寺町地区(loc.O4,loc.O5)や、竜北町高塚から迫地区にかけて(loc.T−01,02,03)局部的に分布する。主に砂層ならびに礫層からなり、層厚は地表露頭で確認できる限りでは2〜7m前後である。本堆積物は、小川町においては肥後片麻岩および花崗閃緑岩を不整合に覆い、また竜北町では赤褐色ロームに覆われている。
その分布高度は、小川町南小野および寺町において標高約30〜40m、竜北町上高塚で標高約16mならびに下高塚で約20m、同町迫および大野東方では標高約50mである。各露頭において堆積物中に平行層理や斜交層理ならびに礫のオリエンテーション等の堆積構造が認められる。露頭が分散しており、また各露頭において層相が変化するためその正確な対比は困難であるが、いずれも阿蘇4火砕流堆積物の下位に分布する水成堆積物と考えられることから、一括して取り扱うこととした。以下に主要露頭における地層の特徴を述べる。
ア.小川町南小野(図2−3−2−2参照)
小川町南小野において、本堆積物は砂を主として下部にはシルト層が見られ中部には良く円磨された中礫層さらに上部に角礫状の中礫層を伴う(loc.O3)。下部のシルト層は青灰色を呈し腐食物を比較的多量に含む。さらに砂層には平行層理や斜交層理が認められる。当地域における水成堆積物は肥後片麻岩ならびに宮原花崗閃緑岩を不整合に覆い、扇状地堆積物およびAso−4火砕流堆積物と考えられる地層に覆われる。寺町における本堆積物の層厚はとくに厚く7mを越える。
イ. 小川町寺町(図2−3−2−3参照)
本地区においては小川町観音山登山道を境として道路下(A地点)と道路上(B地点)の2箇所で水成堆積物が露出している。以下にそれぞれの露頭の特徴を述べる。
a.道路下(loc.O4)
本露頭における水成堆積物は、下部および上部は礫径1〜10cmの亜角礫および角礫による中礫層から構成され、中部はおもに砂層よりなる。下部および上部の中礫層の構成礫種は主に花崗岩質岩であり、クサリ礫化が認められる。
露頭中部における砂を主体とする層は、中粒砂および粗粒砂から構成され、礫径0.2〜3cmの細礫を少量含む。また、これらの砂層は炭化物による薄層をシーム状あるいはレンズ状に挟む。さらに1セット高が約40cmの斜交層理が発達する砂層も見られる。本露頭における水成堆積物は花崗閃緑岩を不整合に覆い、その層厚は約3.5m程度である。
b.道路上(loc.O5)
本露頭における水成堆積物は、花崗岩の細礫を比較的多量に含有する細粒砂〜粗粒砂層が主体である。そのため、露頭は全体的に風化が進み褐色を呈する。ただし、最下部の砂層には軽石のクサリ礫が少量含まれ、上部付近には軽石のみから成る層が認められる。各地層の堆積面は比較的明瞭であり、下部ならびに中部では平行層理が良く認められる。
上部付近に認められる軽石層は、全体がオレンジ色を呈する発泡の良い軽石で構成され、密度が非常に小さい。これらの特徴から本軽石層は、鳥栖オレンジ軽石流堆積物と対比されるものと推測できる。
ウ. 竜北町高塚(図2−3−2−4参照)(loc.T−01,02,03)
本地区における本堆積物は礫径が0.5〜20cmの礫層である。礫種は礫岩、砂岩、チャート、頁岩で構成され、比較的新鮮である。また側方変化が著しく、同一露頭内で平行層理が明瞭な凝灰質細粒砂およびシルト層に変化する。竜北町上高塚における本堆積物は礫径が0.5〜20cmの礫層である。礫種は礫岩、砂岩、チャート、頁岩の亜円礫で構成され、比較的新鮮である。
4) 阿蘇3火砕流堆積物ならびに阿蘇3・4間堆積物(loc.T−01,02,03,04)
阿蘇3火砕流堆積物と阿蘇3・4間堆積物は、竜北町吉本から上高塚にかけての幅約1Kmの地域にごく局所的に分布する。その分布高度は竜北町上高塚で標高約16mならびに下高塚で約20mである。
阿蘇3火砕流堆積物は、褐色を呈する堆積物で、未区分洪積層を覆い(loc.T−01)、阿蘇3・4間堆積物に覆われる(loc.T−04)。本地域における阿蘇3火砕流堆積物は、赤色に風化したスコリアを含むのが特徴である。地表で確認される阿蘇3火砕流堆積物の層厚は、最大2.5m程度である(loc.T−01)。
阿蘇3・4間堆積物は鮮やかな赤褐色を呈し、層厚は下高塚において最大1.8mを有する。本ロームは竜北町下高塚において上記の阿蘇3火砕流堆積物を覆い、阿蘇−4火砕流堆積物に覆われている(loc.T−04)。全体にシルトから粘土を基質として、チャートなどの最大径3cm前後の亜角〜亜円礫が散在しているが、堆積構造は認められないことが多い。肉眼観察により石英および自形の角閃石などの鉱物が認められる。
5) 阿蘇−4火砕流堆積物
阿蘇4火砕流堆積物は、氷川右岸から砂川左岸にかけての地域において、ほぼ南北方向に約1Kmの幅をもって帯状かつ連続的に分布する。その分布高度は竜北町大野東方において最も高く標高70mであり、竜北町下高塚において最も低く沖積面に接する。当地域の阿蘇−4火砕流堆積物は竜北町上高塚、下高塚ならびに大野東方において上記の赤褐色ローム層を覆う。また、帯状分布の両縁辺付近では下位の阿蘇3・4間堆積物およびその下位の未区分洪積層を欠いており、火砕流堆積物は直接花崗閃緑岩を覆う。
当地域の阿蘇−4火砕流堆積物は全般に明灰色を呈し、おもに火山ガラスを基質として発砲の良い軽石を多量に含む(loc.R3)(写真38)。さらに基質および軽石に普通角閃石を含み、頁岩などの異質岩片を伴う。本火砕流堆積物はおおむね非溶結であるが、吉野川最上流の谷部および氷川中流の河岸においては溶結部が認められる。また、高塚地区などにおいては、近傍のリニアメントと同系統の節理面が集中して見られる箇所がある(loc.R4)(写真39)。なお、本火砕流堆積物の調査地域における最大層厚は推定30m程度と考えられる。
阿蘇−4火砕流の噴出年代については、松本ほか(1991)により89±7kaのK−Ar年代値が報告されている。
A 完新統
1) 扇状地堆積物
扇状地堆積物は、淘汰の悪い大礫および巨礫からなる地層であるが(loc.R6)(写真40)、その地形状況から旧期・新期の2面に区分される。本堆積物は、南北に延びる山地に発達した縦谷から、扇頂−扇端が東−西方向に揃って多数分布する。ただし砂川から氷川にかけての地域は丘陵地であるためほとんど認められない。北部の小川町では、扇状地の数は多いが、その規模は比較的小さい。一方、南部の宮原町と八代市では規模が大きいが分布密度は低い。北部(小川町)の扇状地における扇頂および扇端高度はそれぞれ平均50m、15mであるのに対して、南部の宮原町ならびに八代市においてはそれぞれ平均40m、20mである。
扇状地堆積物の形成年代について、千田(1978)では木片の14C年代測定により
4,500±190y.B.P.が報告されている。
2) 沖積層及び崖錐
沖積層は現河川沿いならびに平野部に分布する。猿山(1986)は、鏡町におけるボーリング結果から、八代平野の地下地質を、標高−80mから平野面にかけて下位より、未区分洪積層(下部層)、阿蘇−3火砕流堆積物?、未区分洪積層(上部層)、阿蘇−4火砕流堆積物、島原海湾層、白色火山灰層、不知火粘土層に区分している。
崖錐は、調査地域一帯で普通に見られ、山地が平野に接する斜面の下端部付近に分布している。渓流の開析によって観察される崖錐堆積物は粘土、シルト、砂、細礫を基質として淘汰の悪い大角礫から構成されている。