(1)中古生界

北部地域の中・古生界は、娑婆神峠より北へ向かって領家帯に含まれる肥後変成岩類、中生代の堆積岩である御船層群が分布する。中古生界はおもに、山地部の多い豊野村ならびに城南町において良く分布し、標高200m前後の比較的急勾配の山地を形成している。

@ 肥後変成岩類

肥後変成岩類は、片麻岩を主体として小川町から豊野村寺村にかけて分布する古生代の変成岩類である。主要構成鉱物は、斜長石、石英、角閃石、黒雲母であり、面構造が明瞭に発達している(loc.T25)(写真1)。また、本変成岩類には結晶質石灰岩が挟在していることがある。娑婆神峠以南地区の小川町砂川沿いにおける結晶質石灰岩は、ごく薄くレンズ状に分布するのみであるのに対して、北部地域では比較的連続の良い岩体として分布する。その分布方向はおおむね北東−南西方向である。本石灰岩は、再結晶作用を受けて極めて堅硬・緻密な岩質を示すが、娑婆神峠周辺では北西−南東系および北北西−南南東系の節理が顕著に発達し、おおよそ30cm立方のブロック状となっている(loc.S1)。また、豊野村日当における本石灰岩は塊状であり稼行対象となっている。

A 御船層群

御船層群は、豊野村山崎から城南町東部ならびに御船町東部に分布する。全般に、地層の走向は北東方向で北傾斜を示す。本層群は主に泥岩、砂岩、礫岩、凝灰岩からなるが、大きくは砂岩、泥岩からなり二枚貝化石を多産する下部層と、おもに赤紫色を呈しノジュールを産する泥岩と淡緑色の凝灰岩ならびに淡灰色の砂岩から成る上部層とに区分される。本調査地域における御船層群下部層は、豊野村浜戸川右岸八の瀬戸から尾村に至る地域に分布し、淡褐色の砂岩泥岩互層からなり二枚貝および腹足類の化石密集層を伴う(loc.T36)(写真2)。一方御船層群上部層は、豊野村浜戸川左岸北山崎から城南町、御船町にかけて分布する(loc.M1)(写真3)。