ここでは参考資料として、熊本県教育庁文化課より、遺跡分布図および一覧表、遺跡台帳の資料貸与をうけてとりまとめた。
1)時代区分
遺跡分布調査では、遺跡毎に分布標高および時代・時期を調べ、遺跡一覧表を作成し、巻末資料−1に示す。なお、遺跡の時代・時期に関しては、調査目的とデータ(遺跡台帳)の精度等勘案し、特に縄文・弥生時代に的を絞り、表1−2−2−2に示すような区分で行った。
なお、資料として用いた遺跡台帳には時代の記載がなされていないため、巻末資料冒頭に示す「出土品時代区分表」に基づいて、遺跡の形式や出土物から各遺跡の時代・時期を決定した。なお、遺跡台帳に出土品の記載のないもの、記載があるが時期まで特定できないものに関しては、時代不明・時期不明として取り扱っている。
表1−2−2−2 遺跡時代区分一覧表
2)調査結果
調査地域における遺跡の分布状況等から、海水準の時系列変化(=旧汀線の変遷)を捉え、断層活動に関連する情報の確認を試みた。ここでは、ある時期における海水準は、少なくともその時期の遺跡の最低標高よりも低いということを前提とし、便宜的に最低標高をその時期の海水準として見なす。
検討範囲は、海水準との関連について考察するために、八代平野一帯に限定した。巻末資料の分布位置図にその検討範囲を示し、検討対象となった遺跡については一覧表に印を附している。
図1−2−2−3に平野部の遺跡全体の垂直分布グラフを示す。グラフは八代海から平野部を見たイメージで作成し、図の左側が北北東、右側が南南西を示し、視覚的に分かりやすくするために、山地尾根と平野の標高(横断方向)を示している。
また、図1−2−2−4には、遺跡の分布が確認されていない先土器時代、及び古代以降を除く縄文・弥生・古墳の各時代別の垂直分布グラフを示している。点線で示される標高は、各時期の最低標高である。
図1−2−2−5に示すグラフは、各時代・時期の最低標高を時系列で表したものである。点線で示されている標高は、時期不明の遺跡の最低標高である。従ってこの横軸で示される点線より上にある(標高の高い)データは、有効データとして扱うことが出来ないものとなる。
結論として、3つの時代のうち、弥生・古墳時代については遺跡の分布するすべて時期の最低標高が時期不明の最低標高より高いために検討が出来ない結果となった。また、縄文時代についても、中期・後期の2期分しか有効データが得られなかったため、実質的な検討は不可能な結果となった。
図1−2−2−3 遺跡垂直分布グラフ(八代平野部)
図1−2−2−4 遺跡垂直分布グラフ(時代別:標高0〜40m)
図1−2−2−5 遺跡最低標高変化グラフ