歴史地震679年から1946年の間に高知市(緯度33.56゜,経度133.55゜)を中心として半径300qに生じた地震の内,マグニチュ−ド(M)が6.0以上で8.6以下の地震121個を地震カタログからとりあげ,図6−2 に震央位置図を示す。高知市からどれぐらい離れた地点にどれぐら いの大きさの地震がいつ生じているかを図6−3 に示す。Mの最大(8.4)は安政南海地震で1854年に約148q離れたところで生じ,M6.0が8.1qと,高知の直下で生じている。Mの頻度を 0.1きざみで整理した頻度分布(棒グラフ)と累積頻度分布(折線グラフ)に分けて図6−4 に 示す。121個の地震の内,マグニチュ−ド6〜7が多いことがわかる。 同じく,図6−5に縦軸に1年に起こる頻度の対数 log(Y)をとり,Mと回帰分析を行う。Log(Y)=A+B・M の定数A,Bは,A=2.57,B=−0.59となる。震央距離から距離減衰式を用いて,地盤種類を沖積層とし,最大加速度,速度,変位を予測し,図6−6 に示す。同図より約100q離れた地点の地表で,最大加速度,速度,変位はそれぞれ,約 220cm/s2,25cm/s,6.5cmが生じ,距離が大きくなると減衰していることがわかる。 地震動最大振幅(加速度,速度,変位)の年代順の分布を図6−7に示し,被害の概要を表6−1に示す。同図より684年(白鳳の南海地震)に生じた111q離れた地表で約222cm/s2(25cm/s,6.3cm)が生じていることがわかる。応答値(加 速度,速度,変位)の頻度を4galきざみで整理した頻度分布(棒グラフ)と累積頻度分(折線グラフ)に分けた図を,図6−8 に示す。一番多い地震動の強さは応答加速度約30cm/s2,速度約2cm/s,変位約0.5cm程度である。最大加速度をAmax とし,Amax 以上の最大加速度の発生回数を対象とした記録年数(1946−678=1268)で割って求めた年平均発生率をFとする。直線回帰式 logF=a+blogAmax を求めて,両対数グラフの図6−9 に示す。 地震動最大振幅の期待値予測として,回帰式より,R=1/Fに対する最大加速度ATを求めると,AT以上の強さの地震動の再現期間Rが定まる。
再現期間と地震動強さの期待値を図6−10に示す。耐用年数50年の場合について地震動強さ(加速度,速度,変位)の関係を図6−11に示す。再現期間R年間に1回生じる地震動Aを加速度(又は速度,変位)期待値といい,構造物の耐用年数SL期間に再現期間R年の地震動より強い地震動が生じない確率,すなわち非超過確率Qは次式で求められる。
Q=exp{−SL/R(A)} …(4)
耐用期間50年間の非超過確率を図6−12に示す。
(2)再現期間(R(A))と非超過確率(Q)の関係
耐用年数を50年とすると再現期間 R(A)と非超過確率Qの関係はQ=e−50/R(A)となる。表6−2から,入力地震動の再現期間 R(A)を50年とすると非超過確Qは0.37となる。当該レベルの地震力が少なくとも,1回生じる確率は1−0.37=0.63となる。確率論上の話と実際に生じるか生じないかという判断とは直接には関連しない。
高知の歴史地震の発生個数が121個で,加速度応答期待値100cm/s2が生じる年平均発生率(R)は図6−9より年再現期間が約15年となる。図6−10より,構造物の耐用年数を100年とすると,再現期間100年の加速度期待値は86.4cm/s2,速度は7.6cm/s,変位は1.5cmとなる。また図6−11より耐用年数を100年とした場合, 高知で非超過確率0.9と0.1に対する加速度期待値は約300cm/s2と約50cm/s2になる。図6−12より,加速度期待値200cm/s2に対し耐用年数50年と100年がほとんど同じで非超過確率0.9となる。耐用年数 150年で非超過確率は 0.77となる。