のり面は最初に記載されてから10年近く過ぎており,最初に記載された状態からかなり表層が剥離しているようで,断層に落ち込んだ海浜礫層のみかけの状態が異なっている。また,のり面の中ほどには小段があり,これより上の部分は崖錐堆積物が上にのるため,かなり表層が崩壊しており,基盤(四万十層群)とM1段丘礫層と崖錐堆積物の層境界を明らかにするためにはかなりの量の表層土砂を排土する必要があった。
スケッチの結果は,図4−6に模式図,図4−7にスケッチ図を示す。調査の結果,以下の点が明らかとなった。
小段から下の部分は酒井(1987)に記載されているように段丘礫層と基盤岩は直線的な面で接しており,礫層が断層によって見かけ状切られたように見える。小段から上の部分では,断層と礫層の境界面は直線ではなく,図の左側部分では浸食によってえぐられた形状の頁岩の凹部分を段丘堆積物が充填している。また図の右側では基盤と段丘堆積物の境界面は漏斗上に上に広がったような形状をしている。段丘堆積物の最上部は厚さ1〜20pの白色の粘土が分布し,さらにその上位に厚さ1p程度の褐色のシルト層が薄く分布する。
崖錐堆積物は断層の左(北西)側では直接基盤岩の上に載っているが,断層の上では段丘堆積物を少し浸食して下に凸の形状に段丘堆積物と接している。またのり面の北東端では基盤の上に直接載っている。
今回の調査からわかるように,この断層露頭では段丘堆積物は断層によって切られておらず,断層のような強度の弱い部分が浸食によってえぐられた凹部分を段丘堆積物が充填して堆積したものであるといえる。したがってこの露頭においては,断層はM1段丘礫層を変位させておらず,この断層はM1段丘堆積礫層堆積後活動していないと考えられる。