3−6 総合解析

地形から見た仏像構造線の活断層としての評価

空中写真判読では仏像構造線に沿うリニアメントが活断層であるという積極的な証拠は乏しい。活断層であることを示唆する地形は,南国市稲生にみられる東西走向の崖だけである。これらの崖のすぐ西に位置する南北方向に延びる開析谷(南国市稲生)で,バイブロコアリングおよびロータリー式ボーリングによる谷底堆積物の調査を実施した。これによると山麓線の延長部でも基盤深度が変わらないことが明らかとなった。これは直線的な山麓線が第四紀の断層運動によって形成されたものではないことを示唆する。よって稲生に分布する東西走向の崖は断層崖ではない可能性が高い。

地形学的な調査では仏像構造線が活断層であることを完全に否定することはできない。しかしたとえ第四紀後期に繰り返し活動している活断層であるとしても,変位地形は明瞭でないことから,その変位速度はかなり小さいと考えられる。

地質からみた仏像構造線の活断層としての評価

バイブロコアリングおよびロータリー式ボーリング調査から,リニアメントを横断する測線で地質断面図を作成した(図3−7。これによれば基盤岩表面の落ち込みの位置は,地形学的に予想されたリニアメントの位置より70m北側に位置している。基盤岩の落ち込みは断層によるものか浸食によるものかは不明であるが,少なくとも地表面,沖積層,洪積層(上部更新統)の上面はほぼ水平ないし緩傾斜で連続しており,断層による変位を受けていない。音波探査結果においても浦戸湾の中においても基盤岩の表面の落ち込みは見られるが,未固結堆積物には全く変形が見られない。

したがって仏像構造線は,活断層である可能性は低く,たとえ活断層であったとしてもその変位速度はきわめて小さいと考えられる。