3−5 音波探査結果

仏像構造線を対象として浦戸湾内の湾口部から湾奥部弘化台西側の鏡川河口までの範囲において測定を実施した。音波探査測定記録を付図2−1−1付図2−1−2付図2−1−3付図2−1−4付図2−1−5に示した。

浦戸湾内は,大型船舶の航行のために頻繁に浚渫がなされており,表層の堆積構造が乱されていることが想定されたことから,今回の調査においては,航路外の堤防沿いに測定を行った。

測定記録から,浦戸湾湾中央(新築地区)付近においては,層構造を明瞭に示す明確な反射記録が認められたが,湾口部,湾奥部においては海底面と海面の多重反射および震源能力の関係から反射波形は不明瞭である。また,表層部においては浚渫によると考えられる凹凸地形が多く認められた。

測定記録から海底面下の2反射面に注目し,その連続性を追跡し,地質構造を推定した。反射面から推定した地質を表3−2に示し,仏像構造線が横切る測点A052〜A041の南方方向の推定地質断面図を図3−7に示した。

なお,各測線の推定地質断面を付図3−1−1付図3−1−2付図3−1−3に示した。

本調査地域の地質は,図3−8に示した高知平野西部地区の地下地質(甲藤・西,1972)に示したように表層に砂主体の沖積層が分布し,その下部に粘性土層主体の沖積層,洪積 層が分布する。

1)第1層

海底面表層には極軟弱な堆積物によると推定される透明層が認められ,この下部を第1反射面とした。浚渫による凹凸地形も認められる。地質的には沖積層上部に相当すると推定される。

2)第2層

湾央部では成層構造を示す層が認められた。その下部には音響基盤(基盤岩および洪積層)からの反射波形と推定される第2反射面が認められることから,浦戸湾では音響基盤の上位に小海盆状の成層沖積層が堆積する構造にあると考えられる。

3)第3層

不透明層。音響基盤と考えられる基盤岩および洪積層に相当すると推定される。

以上の反射面の特徴から,浦戸湾においては,音響基盤の上位に小海盆状の成層沖積層が堆積すると推定される。

仏像構造線が横切ると考えられる海底では,音響基盤(四万十帯と秩父帯の砂岩,頁岩,石灰岩等および洪積層)に直接沖積層上部の透明層(沖積層上部)が被覆している。この透明層には断層等で切られた構造は見いだせない。このことは,少なくとも最近数千年間は断層活動がなかったことを意味するものと考えられる。

なお,詳細な反射面と地質との対応については,近隣のボーリングデータ等による検討を要する必要がある。