活断層研究会(1991)が示したとおり,仏像構造線に沿うリニアメントは比較的明瞭である(付図1−1−1、付図1−1−2、図3−1)。このリニアメントは地形的に2つに分けることができる。高知市深谷町より西の地域(以後西部と呼ぶ)では,リニアメントは烏帽子山(358.7m)を最高峰とする東西につらなる山地中の直線谷として認められる(写真3−1)。それより東の地域(以後東部と呼ぶ)では,南側の山地と北側の沖積低地を境する直線的な山麓線として認められる(写真3−2、写真3−3、写真3−4)
西部地域ではリニアメントが基盤岩中を通過し,活断層であるか否かを判断するための基準となる第四紀後期の地形面の発達がきわめて悪い。東部では山麓線を開析する谷が各所で発達しているが,沖積面には低断層崖などの変位地形は見当たらない。
リニアメントの東端に近い南国市稲生付近には,土石流性の小扇状地が連続する。この扇状地上で,山麓線の延長部にあたるところに比高2〜4m程度の北落ちの崖が数カ所で認められる(図3−2、写真3−5、写真3−6)。これらの東西走向の崖はやや開析された扇状地上に位置しており,下田川の侵食崖ではない。仏像構造線が活断層であり,直線的な山麓線の形成に寄与しているとすれば,これらの崖が断層崖である可能性がある。その一方で,これらの崖はその大部分が石垣で覆われているなど人工改変の影響を受けている。よって急傾斜の扇状地が人工的に削られてできた崖である可能性もある。