Ub〜Ua層は約500〜1,000yBPに堆積し、Uc層の年代値は2,040yBPである(表6−1)。したがって、event−K1の発生は、約1,000yBPから約2,100yBPの間であると推定できる。
なお、すでに述べたように、N面ではevent−K1に伴う変形は不明瞭である。トレンチ地点が断層の末端部で、S面からN面の間で変位量が減少したか、あるいは断層の位置が不連続に変化するためである(図3−5)と考えられる。
また、Ud層およびV層は波状に変形し、Ud層には火炎状に上方に吹き上がる構造が見られる。このような構造は、event−K1時における液状化現象の発生を示す可能性がある。液状化自体は、小倉東断層の活動を示す直接的な証拠ではないが、Ud層がUc層中に入り込むことから、上に述べたevent−K1の発生時期と極めて近接している。したがって、Ud層・V層の異常な構造も、Uc層堆積後のevent−K1によって形成されたと推定できる。
本トレンチでは、Uc層堆積後のeventを見出せた。これが1回のeventなのか、複数のeventなのかは断言できない。しかし、Uc層の上下変位量が非常に小さいことから、最新のevent、1回だけを検出した可能性が高い。なお、W層中の構造からみて、断層F1がW層を複数回変位させているとは思えない。
本地点での小倉東断層の活動は、W層に見られるような撓曲変形として現れている可能性が高い。そのため、さらに古い時代の活動に関しては、撓曲変形にも注目する必要がある。すでに述べたように、L面の上下変位量は2.8mに達する(図3−6a)。この変位量は、幅数100mに渡る撓曲変形を評価した値であり、トレンチ内で確認できる変位量(20〜30cm)を単純に比較することはできない。しかし、両者には大きな違いがあり、L面は複数回のeventを経験していることはほぼ確実である。本トレンチでは、複数回のeventを検出することができなかったが、これに関しては、志井地区および母原地区のトレンチ調査結果をもとに詳しく検討する。