6−1−3 断層

本トレンチでは、S面のW層中に1つの断層(F1)が露出した(S5.2−5.7/1.2−1.7)。その層厚・傾斜は、N7゚E−N10゚W・45−60゚Wであり、断層面はやや波打っている。見かけ状は西上がりの逆断層であるが、断層条線などの構造は確認できなかった。 断層面の上端はW層最上部には達していない。しかし、W層とUc層の不整合面やUc層には、この断層面を低角に上方へ延長させた位置で異常が確認でき、西側が相対的に隆起するように変位している(S4/0.8,図6−2−1a)。したがって、この断層はUc層までを変位させていると考えられる。ただし、N面のUd層〜W層には、明瞭な変位は認められない。また、後述する志井地区・母原地区で現れた断層面と比較すると本トレンチの断層面は低角である。これらの事実は、本地点が小倉東断層の北端部に位置し、変位量が小さくなることと関係すると思われる。

W層は、断層F1近傍のS4より西側では緩やかに東へ傾斜しているが、それより東側ではほぼ水平に堆積している。このような構造は、小倉東断層の活動によって、W層が撓曲変形している可能性を示している。W層中の礫と粘土〜シルトの境界には、断層F1を境とする大きな食い違いは見られない。したがって、断層F1が複数回活動してW層に累積的に大きな変位を与えているとは考えられない。