石田町(図3−2のLoc.10)では、東の丘陵から西流する小河川が形成した扇状地が分布している。米軍撮影の空中写真あるいは1960年代に国土地理院が撮影した空中写真には、その谷口部に明瞭な断層変位地形が認められる。ただし、現在では人工改変によって消失している。この断層変位地形を、1960年代に撮影された空中写真から復元した(図3−7)。縮尺は1/2,500、等高線間隔は50cmである。
石田町付近の低断層崖の比高は、地形図から読み取る限りにおいて約1mである。撓曲変形は不明であるが、約1mが上下変位量の下限である。低断層崖の比高を比較する限りは、上富野(Sec.1)のL面の上下変位量と同程度であると考えられる。
母原(図3−2のSec.4)周辺の地形分類図と写真図化結果を、それぞれ図3−8、図3−9に示す。図3−9の縮尺は1/2,500で、等高線間隔は50cmである。ここでは、H面・M面と、西流する河川が形成した段丘面が分布している。後者はL面より若い地形面であり、図中では高位からLL1面〜LL3面に細分した。LL面群は、広域的に対比することができないため、図3−2には示していない。図3−8中のLoc.3とLoc.4は、H面構成層の模式露頭の位置であり、すでに記載した。図3−8および図3−9中のLoc.7は、すでに記載した、Aso−4火砕流堆積物(八女粘土)を切る断層露頭の位置である。
この地域では、LL2面に明かな撓曲変形が認められる。LL2面は西流する河川が形成した地形面であるから、東から西へ緩やかに傾斜するはずである。ところが、★印付近では地表面にほとんど傾斜はなく水平になっており、★地点の東では東へ逆傾斜する部分もある(図3−9)。その上流(東)側・下流(西)側の傾斜とは明らかに不調和である。ここでの測量結果(図3−6d)にも現れているように、上流側ほど傾斜が緩いという地形的な異常が認められる。これは、西上がりの断層変位があるために、LL2面が撓曲変形していることを示すと考えられる。上下変位量は 2.8mとなる。想定される断層線を南へ延長すると、断層露頭(Loc.7)の位置とほぼ一致する(図3−9)。後に述べるように、この地点をトレンチ掘削地点として選定し調査を実施した。なお、LL2面の変位量に関しては、トレンチ調査結果も加えて後に再検討する。