3−3−2 L面の上下変位

L面の変位量に関しては、小倉北区上富野(Sec.1)・大畠(Sec.2)・足原(Sec.3)において、精密測量を実施した(図3−2)。その結果を図3−6に示す。

上富野(Sec.1)周辺の1/2,500地形図を、図3−5に示す。本地域においては、現状でも低断層崖を確認できるが、人工改変が顕著に進行する前の空中写真をもとに図化したので、より鮮明に読み取ることができる。等高線間隔は50cmである。小倉東断層は、この図のほぼ中央を北北東−南南西方向に通過しているが、途中で断層線のトレースが不連続に変化するようにも見える。低断層崖の比高は、50cm〜1mである。なお本図には、トレンチ掘削位置も示してあるが、その成果については後述する。

図3−5の測線A−A'に沿って測量を行い、地形断面図を作成した(図3−6a)。

測線は、東から西へ流れる河川が形成した扇状地面(L面)上にある。このため、地表面は西へ傾斜しているが、断層線付近でほぼ水平になっている。初生的にはその部分に、西上がりの比高数10cm程度の低断層崖があったと想定されるが、現在は人工改変によってならされていると考えられる。断層変位には撓みが伴われることが普通であるので、幅数100m程度の範囲で地形面の傾斜を比較して上下変位量を求める必要がある。すでに述べたように、低断層崖の比高は1m程度であるが、図3−6aに示したように撓みを評価すると、小倉東断層の上下変位量は2mとなる。

大畠(Sec.2)と足原(Sec.3)においても、同様の測量成果を得た(図3−6b,c)。上富野と同様に、L面は西へ傾斜する扇状地面である。したがって、本来であるならば、L面は東から西へ滑らかに傾斜して連続するはずである。ところが、断層線付近に傾斜の異常が認められ、滑らかにはつながらない。米軍撮影の空中写真では西上がりの低断層崖が見られるので、後に人工改変によって平坦化されたことを示している。撓曲変位を評価するために、幅数100mの範囲でL面の傾斜を比較すると、小倉東断層の上下変位量は3.2−3.4mとなる。