3−2−3 L 面

足立山西麓においては、西流する諸河川が形成した扇状地性のL面が、比較的広範囲に分布している。平坦面の開析は進んでいない。L面の露頭条件も良好ではないが、いくつかの地点においてL面構成層を観察することができた(Loc.8,9)。これらの地点では、L面は淘汰の悪い角礫層から構成されている。角礫層の層厚は数10cm程度以上である。礫の最大径は10から20cm程度であり、極めて新鮮で風化は進んでいない。

角礫層の上位には層厚数10cmの砂層が堆積しており、土壌は褐色を呈し、赤色土壌は認められない。この砂層中からは、比較的多量の火山ガラスが検出できる。ガラスはバブルウォール型であり、まれに褐色を呈するものもある。その屈折率を測定したところ、1.4962−1.5104であった(図3−4)。明らかに2種類以上の火山ガラスが混じっており、高い屈折率を示す火山ガラスはAso−4に対比可能である。1.500未満の屈折率をもつ火山ガラスの方が量的には多い。この火山ガラスは、ファイバー型の火山ガラスがほとんど含まれないことから、AT(町田・新井,1976;約24,000年前)に対比される可能性が高い。これらの火山ガラスはいずれも、砂層中に混在しており、それらの噴出・堆積後に再堆積したものであると考えられる。ただし、ATに対比できる火山ガラスは非常に大量に認められるため、ATの降下堆積層準に近いと考えられる。

高津(1996)では、H面とL面は区別されておらず、両段丘面ともAso−4を載せる地形面(古期段丘面)であるとされている。しかし、礫の風化程度や面の分布高度から判断して、L面は明らかにH面より新しい。礫層の上位に認められる火山ガラスは時代を確定できる資料ではないが、ATの火山ガラスも比較的大量に混入しているので、L面の形成時期は24,000 年前直前の可能性もある。