ここでは、最新活動時期を仮に1400〜(1300−1200)yBP、再来間隔(R)は北武断層東部地区で実施されたボーリング調査からの値(太田ほか、1991)、R=(1000−1500)〜2500年を用いて、地震の切迫度(E)を下式により試算する。
E=t/R ここに、
1400〜(1300−1200) t:最新活動時以後の経過年数
=−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(1000−1500)〜2500 R:平均発生間隔(再来間隔)
≒(0.8−1.4)〜(0.6−0.5)
言い換えれば、最新活動時期を1400〜1200yBP(西暦550年〜西暦750年)、再来間隔を 1000−1500yBPとすると、(西暦1550〜2050年)〜(西暦1750〜2250年)に次の断層活動が想定され、この場合、近年の歴史資料などに断層活動が記録されていないことを考慮すると、今後近い将来に活動する可能性が高いといえる。また、再来間隔が2500年とすれば次の断層活動は西暦3050〜3250年で、この場合でも再来間隔のほぼ半分以上過ぎていることになる。
以上の試算は北武断層が起震断層として活動した場合について考えたものである。三浦半島を含む南関東地域が巨大地震*を発生させるプレート境界に近接した位置にあることを考慮すると、これらの巨大地震に付随して北武断層が活動する可能性も否定できない。この場合、上記の試算より早い時期に活動する可能性がある。さらに、北武断層の南側にはA級の活動度とされる武山断層が近接して分布し、これが海溝性の地震と共に同時に活動するのか別かによっても活動時期や被害の程度が異なるといえる。南北両断層の関係についても今後十分に検討することが必要である。
(*元禄地震、1703年:M7.9〜8.2、関東地震1923年:M7.9など)
いずれにしても、上記の事項を踏まえれば、北武断層は短い場合には数100年以内、長く見積もっても1000年以内に地震を起こす可能性のある断層と言える。