文献による北武断層東部の最新活動時期は、
1)北武断層陸域部のほぼ東端にあたる国立久里浜病院敷地で実施されたトレンチ調査から、1050〜1250yBPとされている(佐藤ほか、1994)。
2)国立久里浜病院北西方の谷で実施されたボーリング調査からは、 1000〜1500yBPとされている(太田ほか、1991)。
西端部松越川中流地点では、
3)トレンチ調査の結果では、北武断層の西方延長と考えられる基盤の断層(破砕ゾーン)は葉山層群中には確かに存在するが、それを覆う完新世の礫層を切っておらず、少なくとも、約3,300年前以降現在まで断層活動はなかったものと結論されている(神奈川県環境部、1995)。
の報告がある。
今回の調査結果による最新活動時期は以下のようである。
断層西部地区にあたるNo.1地点(芦名野々池)の調査では、完新世の河成堆積物を切る横ずれ変位量60cm以上、上下変位量約20cmの右横ずれ変位の卓越した断層が確認された。その最新活動時期は切った切られたの関係から、1400〜1300−1200yBPである。
No.3地点(横須賀市太田和)の調査結果からは、北武断層に沿う位置完新世堆積物層の変形は確認されたが、これと北武断層との関係が不明で、断層の最新活動時期は少なくとも660±85yBP以前である。
既存文献および今回の調査結果から、北武断層の最新活動時期は東部の野比付近から西部の松越川中流域付近までの断層全体を通してほぼ同時期(1000〜1500yBP)とすることができる。また、西端部(松越川中流地点)では、この時期の最近の活動は認められていない。このことと先述の谷の横ずれ量の西への減少とから北武断層の活動は西に向かって収束し、最新活動時期(1000〜1500yBP)の活動は、No.1地点付近を西限としていると考えられる。また、既述のNo.1地点の最新活動時期における変位量は、北武断層の活動の最小値を示すとみなすことができる。
今回の調査では、活断層の再来間隔を把握することはできなかった。調査地域東部で実施されているボーリング調査結果によれば再来間隔は(1000−1500)〜2500年(太田ほか、1991)とされている。今回の調査では断層活動は最新の1回しか確認できなかったが、最新活動時期が東部地区とほぼ同時期であることを考慮すれば、今回の調査地域(断層西部地区)でも同様の活動間隔と推定される。