No.1地点付近の空中写真判読からは、西北西−東南東方向に断層鞍部の連続と谷の右横ずれ地形がみられた。この谷の横ずれ量については、安藤(1972)は95m、太田・山下(1992)は250〜350mとしているが、今回その量の特定はできなかった。また、本地点上流右岸斜面には崩壊地形が認められる。本地域に分布する河成堆積物の供給は、この崩壊によるものの一部と考えられる。
現地調査からは、付近には三浦層群逗子層が分布するが、断層に沿って狭小な範囲に葉山層群鐙摺層が挟まれるように分布する。トレンチ地点では断層北側に逗子層、南側に鐙摺層が認められた。
ボーリング調査はトレンチ計画地点で断層想定位置を横断するよう4孔実施した。調査の結果、本地点の地質はシルト、礫、有機質シルトおよびそれらの互層からなる完新世河成堆積物が層厚6〜10mで確認され、その下位に逗子層などの基盤岩がみられた。なお、基盤岩分布標高が上流側で低い位置であったことから河成堆積物に埋積された尾根状地形または断層の存在が推定できた。
以下に、トレンチ調査により判明した事項を示す(本論図5−2−2参照)。
1)断層の詳細な位置が特定された。
2)断層は基盤岩では葉山層群鐙摺層と三浦層群逗子層を境するもので、礫層(完新世 河成堆積物)を切り、断層の見かけの垂直ずれは20cm、水平ずれ(右横ずれ)は60 cm以上で、垂直ずれより横ずれ変位量が卓越する右横ずれ断層である
3)断層の最新活動時期は 14C年代値によれば1400〜1300−1200yBPで、再来間隔は不明である。
4)地層堆積年代(1700〜1400yBP)と右横ずれ量(60cm以上)から求めた平均変位速度は約0.4m/1000年以上で、 活動度B級以上の活断層である。