今回の調査地である北武断層帯に沿った地域に分布する地質は、下位から新第三紀の葉山層群及び三浦層群、第四紀更新世の未固結堆積物、完新世の段丘及び河成堆積物からなる(本論 表3−2−1)。
本地域の基盤岩である新第三系は東西方向もしくは西北西−東南東方向に帯状に分布する。基盤岩の地質は北武断層帯の東部から中部にかけては南側に葉山層群、北側には三浦層群が分布する。一方、西部付近では断層北側に葉山層群、南側に三浦層群が分布する。いずれも地質境界にほぼ断層が位置している。更新世堆積物は、今回扇山山頂部に分布する未固結の砂〜砂礫層や関東ローム層が確認された。しかし、北武断層を挟んで北側丘陵地にはこれに相当する堆積物が認められず、これからは断層活動について検討することができなかった。完新世堆積物の段丘堆積物・河成堆積物は丘陵地間の狭小な谷部に分布する粘性土、砂質土等の未固結堆積物からなる。本層が北武断層沿いに分布する箇所においてボーリング調査、トレンチ調査を実施し、完新世における北武断層の活動性について検討した。
今回現地調査により確認できた北武断層の露頭は、長沢四ッ田地区で施工されている横須賀リサーチパーク造成工事の法面(図3−2−2、図3−2−3)とNTT研究センター西方約0.6km の丘陵斜面(北向き)の2箇所の断層破砕帯露頭(写真3−3)である。これらの露頭により北武断層の位置が特定されたが、断層直上に完新世堆積物が分布せず、断層の活動性については確認できなかった。これら断層位置は、ほぼ太田・山下(1992)により示された断層位置に合致している。