3−1−4 国府津−松田断層の活動時期

山崎(1984;1985)は地形・地質調査およびボーリング調査から、国府津−松田断層の平均変位速度を求めた。それによれば、約25万年間では足柄平野が約500m沈降していることから、足柄平野の沈降速度を2m/ky(千年あたり2m)以上としている。また、約6万年前(現在は8万年前と考える)に形成された三崎面相当の段丘の標高が大磯丘陵で+105m、足柄平野で−30mを示すことから、国府津−松田断層の平均変位速度を2.3m/kyとしている。そして、足柄平野では関東地震の繰り返しによる隆起の累積と、国府津−松田断層の運動に伴う大規模な沈降が重複していると考えた。その根拠は足柄平野においてK−Ah(鬼界アカホヤ:約6300年前、較正値7300年前)層準が沈降し、縄文晩期の沖積段丘面(鴨宮面:約2500年前)が隆起して存在するという事に基づいている。そして、鴨宮面が段丘化していることから、足柄平野は最近に国府津−松田断層の運動による沈降運動を受けておらず、同断層は少なくとも2300年間は活動していないと考えている(山崎,1985)。Yamazaki(1992)、山崎(1993)は足柄平野における大正型地震の地殻変動と大磯型地震の地殻変動との重複モデル(図3−3)を示し、国府津−松田断層の再来間隔を2000〜3000年と推定している。水野ほか(1996)、水野・山崎(1997)は国府津−松田断層でトレンチ調査を行った。トレンチ調査(山田、上曽我、曽我谷津、国府津の4地点)の結果から、各地点における地変(地割れや地すべり、小断層)の時期を検討し、国府津−松田断層の最新活動時期は約2800〜2900年前である可能性が高いとしている(図3−4)。しかし、断層本体の変位は確認されていない。山崎・水野(1999)ではボーリングコアの珪藻分析からF−Zn(富士砂沢スコリア:2800年前)の直下(約3000年前)の足柄平野の沈水現象が報告され、それ以降に顕著な地変が認められないとしている。

神奈川県(2003)は小田原市曽我原でトレンチ調査を行い、国府津−松田断層の最新活動時期をAD1100年〜AD1350年(約650〜900年前)であることを明らかにした。