6−7 引橋断層

・位置と長さ

引橋断層にも、右横ずれを主体とする断層地形がみられる(太田ほか,1982;太田・山下,1992など)。トレンチ調査はこれまで行われていなかったが、今年度調査でトレンチを掘削し観察した。引橋断層の位置は太田・山下(1992)、渡辺ほか (1996)などにしたがい、三浦市南下浦町皆ヶ久保から三浦市丸山までとし、長さは1.9kmとした。 引橋断層の西端(丸山付近)および、東端(皆ヶ久保付近)では、断層変位地形はみられなくなる。

・平均変位速度、最新活動時期、活動間隔

引橋断層は、右横ずれと南上りの成分をもつ。横ずれの平均変位速度については、年代が明らかな変位基準がないため正確には決められないが、上下成分については小原台面などが変位基準となる。太田ほか(1982)などは、三崎面に南上りの変位を記載し、0.1m/1000yという上下成分、谷の右ずれから、0.2〜1.2m/1000yという水平方向の平均変位速度を算出している。地質分布からみると、引橋断層は地層境界をなさず、初声層のなかを通りわずかに南上りの変位を与えている。谷の右ずれ量と上流の長さを松田(1966)の式(S=10a)にあてはめると、引橋断層の活動度は0.7m/1000yとなる。

今年度のトレンチ調査によると、引橋断層の最新活動は6,100年前以前、活動間隔は不明であるが少なくとも6,100年以上である。