これらの活断層が地下において収斂していると仮定すると,三浦半島断層群すべての活断層の活動時期を満足するような平均的活動間隔を想定する必要がある。例えば北武断層の最新活動時期は,1200〜1400yrsBPであり,武山断層の最新活動時期は,2000〜2200yrsBPである。これらの活断層が地下で収斂しているとすれば,1000年未満の間隔で活動している可能性がある。
三浦半島断層群の活動履歴は,十分に復元されているとは言い難いが,各活断層の最新活動時期を考慮すれば,数百年程度の間隔で活動している可能性が指摘できる。三浦半島断層群全体としては,最短で数百年程度の間隔で活動していても,三浦半島で活断層が地表面に達する位置は活動ごとに異なり,いずれかの活断層が活動することもありうる。
このような視点に立てば,武山断層の最新活動時期から2000年以上,北武断層の最新活動時期から1000年以上がすでに経過していることから,比較的近い将来において三浦半島断層群を起震断層とする直下型地震が発生する危険性があることになる。その時には,南下浦断層に沿って地表変位が現れる可能性もある。
図3−5のように,三浦半島断層群が相模湾から地下へ連続するプレート境界に収斂しているとすると,三浦半島断層群全体がプレート境界で発生するマグ二チュード8クラスの地震により副次的に変位する可能性を想定する必要がある。ただし,三浦半島断層群が相模トラフを震源とするプレート境界の地震に付随して変位するとすれば,約80年前に1923年の関東地震が生じたばかりであり,相模トラフから繰り返し発生する大地震の間隔が数100年以上であることを考慮すると,近い将来に活動する可能性は低くなる。ちなみに,関東地震の際には三浦半島断層群では顕著な地表変位は認められず,武山断層東端で武山断層の一部と考えられている下浦断層が確認されている。