3−2−2 三浦半島断層群の相互関係

衣笠,北武,武山の3断層の相互関係は,太田(1999)によって以下のようにまとめられている。

@ 北武,武山断層の両断層は,地下では一つに収斂している可能性が高い。

A 両断層の距離はわずか1〜2kmにすぎず,どちらかの断層が動けば,その結果の震動域は,衣笠,北武,武山の3断層帯全域に影響すると見た方がよい。

B 3断層は一つの断層帯として扱われるべきで,活断層の活動によって影響を受ける頻度は,個々の活断層の再来間隔よりずっと短くなる。

C 3断層の活動は,プレート境界である相模トラフでの断層活動,あるいは国府津・松田断層の活動と連動している可能性がある。しかし,現段階では,両者との関係を議論するだけの情報を持たない。

横ずれ断層帯が発達する地域では,地表で見られる断層群は,地下深部に向かって主断層に収斂していくことが一般に知られている。図3−2に示したように衣笠,北武,武山の3断層と南下浦断層および引橋断層は,ほぼ同走向の右横ずれ断層であり,変形様式は一致する。したがって,上記5つの断層群は,杉村(1973)が示した図3−5のように,地下深部で同一の断層に収斂し,プレート境界につながっている可能性が指摘される。

太田(1999)で示されたように,衣笠,北武,武山の3断層は,断層間の距離や震動域および被災頻度を考慮すれば,一つの断層帯として扱う必要がある。同様に南下浦断層および引橋断層は,3断層と同様の変形様式を示し,3断層との距離が短いことから,三浦半島断層群を構成する5つの断層は,一つの断層帯として評価してよいと考えられる。

ただし,菊名トレンチで明らかになったように,南下浦断層の活動履歴は,衣笠,北武,武山の3断層に比べ,最新活動時期は十分に古く,活動頻度は低いため,最近の活動は,衣笠,北武,武山の3断層が主となっていると考えられる。

杉村(1973)で示された相模湾断層と三浦半島との関係を図3−4に,三浦半島および房総半島の南北方向の推定断面図を図3−5に示す。

図3−4 関東地震の震源になった相模湾断層と三浦半島(杉村:1973)

図3−5 相模湾断層と延命寺・下浦断層との関係についての想像断面図(杉村:1973)