2−4−6 トレンチ内の水平ボーリング

トレンチのり面および断層追跡溝で観察できた南下浦断層は,南傾斜の高角逆断層である。南下浦断層沿いの段丘面や谷底低地は右横ずれの変位様式を示すこと,トレンチのり面では断層を境しての地層の対比が困難であること,西側の断層追跡溝底盤では右横ずれの引きずり変形が確認できることなどから,トレンチで確認された断層は,横ずれ成分を伴うことが推定された。断層を境した地層の対比は,次のような地層の分布状況により困難であった。

@ 衝上断層であり上盤側と下盤側に分布する地層が異なっている。

A 地すべり土塊が分布する西側のり面では,約35,000〜4,000yrsBP間の地層が侵食によって消失している。

のり面などの観察から,断層は南上がりの垂直成分を伴う右横ずれ断層であることが推定できた。しかし,垂直および水平方向の変位量は,トレンチのり面および断層追跡溝の情報だけでは,推定するには至らなかった。

横ずれ成分を把握するためには,断層方向にトレンチを増掘する手段も考えられたが,借用した用地が狭いこと,用地の借用期間などに制約があることからトレンチ内部から水平ボーリングを実施した。