表2−8 年代測定結果の一覧
得られた14C年代値は,同一層準から得た試料でもバラツキが認められ,年代が逆転するような値も見られる。このような異常値と判断される測定試料は,表2−9に示すとおりである。
表2−9 異常値と判断できる試料
異常値を示したのは,D層およびF層からの試料である。
D層の年代は,約24,000〜11,000yrsBPが得られており,下位から上位にいくにしたがい若い年代を示す。D層は谷底堆積物であることから,下位から上位に堆積した状況が年代値からうかがえる。異常値は,約4,300yrsBPでありB層の年代に相当する。サンプル採取位置がD2層最上部付近に位置することから,B層がかつて地表面であった時期の有機物が,何らかの機構でD2層内に混在したと考えられる。
F層の同一層準で得られた年代は,32,000〜39,000yrsBPを示しているが,異常値は4,000〜4,800yrsBPと著しく若い年代値を示している。4,000〜4,800yrsBPは,西側のり面におけるF層直上のB層の年代である。
トレンチ西側のり面におけるF層は,B層からF層に向かってパイプ状に伸びた腐植土がしばしば観察できる。このパイプは,B層がかつて地表面であった時の植物根痕であり,植物根は分解して消失した後にB層の腐植土が充填したものと考えられる。
したがって,D層およびF層で得られた4,000〜4,800yrsBPの若い年代値は,B層の年代値を示す異常値と考えられ,トレンチ内の層序を考える場合は,棄却すべきデータである。