(6)F層

F層は,腐植物・炭化木片・植物片を多量に含むシルト質砂礫層である。上部には腐植物を含む青灰色のシルト層が分布し,火山灰質のシルト層を挟んでいる。下部には白色の軽石粒を含む砂質シルト層や砂質腐植層が分布している。最下部には,基底に有機物を多く含む円礫層が分布している。F層は,これらの各地層の特徴からF1層〜F4層に区分した。

@ F1層

この層は,青灰色塊状の腐植質シルト層からなり,層厚は50p以上で,下限から20cm前後の位置に暗灰桃色の火山灰質シルト層を挟んでいる。この火山灰質シルト層はごく細粒で,多量の長石を含む以外に特徴的な重鉱物や火山ガラスは検出されていない。F1層全体の層厚は1m以上あることが,東側のり面の追加掘削によって明らかとなっている。地層中には,多量の炭化物が点在している。

A F2層

この層は,炭化物混り砂礫層からなり,基質はシルト質である。層厚は50cmから1m程度で,径1〜5cm程度の初声層起源の角礫を多く含んでいる。地層中には多量の炭化物・木片・植物片を含み,径1〜3cm程度のやや発泡した白色軽石粒が点在する。

また,この層は全体に弱いラミナが見られるが,西側のり面では下位のF3層とともに断層付近で大きく変形している。また,西側のり面では下位の宮田層とはせん断面で接している。北側のり面では,本層は,宮田層とF3層を削り込んだ小規模な谷地形に分布している。

B F3層

F3層は,礫・砂混りの腐植層からなり,多量の炭化物・木片を含んでいる。層厚は50p程度である。トレンチの西側のり面では,地層が大きく変形し,きわめて低角度のせん断面によって切られており,断層面付近にのみ出現している。東側のり面では,基底が不明となっている。本層中には保存の悪い生痕が観察され,また炭化物も点在している。

断層下盤側のトレンチ最深部における北側および南側壁では,東側半分はこのF3層およびF2層が出現する。したがって,F3層およびF2層は,宮田層を削りこんだ谷地形を埋積した地層であると考えられる。

東側のり面ではD層に削り込まれ,南側のり面ではD層およびB層に削られている。本層は,下位の砂礫層が薄い部分では,厚く分布するが,部分的にこの砂礫層とは指交関係にある。

C F4層

本層は基底に炭化物・木片を含む円礫層であり,層厚は20〜50pである。含まれる礫は径2〜8pの円礫を主体としており,主に初声層起源の凝灰岩の礫によって構成され,わずかに泥岩なども含まれている。基質はシルト質砂〜粗粒砂である。下位の初声層とは明瞭な傾斜不整合関係で接する。