菊名地区の測線位置を図2−14に示す。
(1) ME−3測線(L=60m,電極間隔:1m,ダイポール・ダイポール法)
本測線は,比抵抗分布から断層位置を捉えることを目的に,ボーリング調査に先行して実施した。電極間隔は,分解能を高めるため1m間隔とし,電極配置は垂直構造を捉えやすいダイポール・ダイポール法とした。電気探査に先行して実施したスウェーデン式サウンディングの結果,菊名地区における谷底堆積物は約6mの厚さであることが分かった。
@ ME−3測線の結果
比抵抗分布は,以下のように大きく3層に分帯することができる。ME−3測線の二次元比抵抗断面は,図2−3−4−1に示す。
* 地表からGL−2m付近の40〜50Ω−m
40〜50Ω−mの比抵抗ゾーンが,測線全体の最上部に連続性良く認められる。ボーリング調査の結果,本層は表土,耕作土および火山灰質粘土の二次堆積物からなることが確認された。また,最終孔内水位はGL−2m付近にあることから,40〜50Ω−mの比抵抗は,不飽和状態の粘土を表している。
* GL−2〜5m付近の20〜30Ω−m
20〜30Ω−mの比抵抗ゾーンは,ほぼ水平に分布する。周囲より相対的に低い比抵抗値を示すことから飽和状態の粘土と推定された。
ボーリング調査の結果,20〜30Ω−mの比抵抗分布範囲は,シルト〜粘土で構成されることが明らかになり,飽和した谷底堆積物を表している。
* GL−5m以深の30〜90Ω−m
比抵抗は,北側(測線起点側)では90〜70Ω−mと相対的に高い値を示すが,急傾斜の構造を示しながら次第に低くなり,南側(測線終点側)では30Ω−mとなる。この比抵抗分布は,測線距離程25〜35m付近に急傾斜する地質構造があることを示唆している。
A ME−3測線の解釈
GL−5〜6m以深の距離程25〜35mに見られる急傾斜する比抵抗構造は,基盤内の不連続面である南下浦断層に対比できる可能性を示唆している。
約6mの谷底堆積物は,解析断面上で比較的明瞭に表れている。測線終点側で20〜30Ω−mのゾーンが傾斜しながらやや深くなる。このことは,基盤の初声層上面が風化・粘土化しているため低い比抵抗値として表れたためと考えられる。
図2−14 ME−3測線の二次元比抵抗断面 縮尺1:200
(2) MT−13測線(電極数:54極,電極間隔:1m,電極配置:2極法)
MT−13の目的は,blB−2孔で確認された南下浦断層の性状(傾斜,破砕幅)を比抵抗分布から捉えることである。したがって,探査範囲はblB−2を取り囲む範囲とし,電極は1m間隔とした。測線は,blB−1に孔中電極15極,地表電極19極,blB−3に孔中20極を設置し,電極配置は2極法とした。
MT−13測線の二次元比抵抗断面を図2−15に示す。
@ MT−13測線の結果
比抵抗分布は,不明瞭な3層構造を示す。
* 地表からGL−2m付近の30〜40Ω−m
30〜40Ω−mの比抵抗値を示すゾーンが,測線全体の最上部に連続良く認められる。
ボーリング調査の結果,本層は表土,耕作土および火山灰質粘土の二次堆積物からなることが確認された。また,最終孔内水位はGL−2m付近にあることから,30〜40Ω−mの比抵抗値は,不飽和状態の粘土を表している。
* GL−2〜5m付近の10〜30Ω−m
10〜30Ω−mの比抵抗ゾーンは,南側(測線終点側)でやや深くなる傾向があるが,測線全体で見るとほぼ水平に分布する。周囲より相対的に低い比抵抗値を示すことから飽和状態の粘土で構成される。
ボーリング調査の結果,10〜30Ω−mの比抵抗ゾーンは,飽和したシルト〜粘土から構成される谷底堆積物を表している。
* GL−5m以深の40〜60Ω−m
比抵抗値は分帯できるが,この比抵抗ゾーンの構造は不明瞭である。
A MT−13測線の解釈
比抵抗分布は,表層の不飽和粘土層,飽和した細粒堆積物の分布状況と一致する。しかし,基盤内の比抵抗分布から,基盤内の地質構造を推定することは困難であり,blB−2孔で確認された断層部の比抵抗コントラストも不明瞭である。
図2−15 MT−13測線(トモグラフィ)の二次元比抵抗断面縮尺1:200