(1)南下浦断層−菊名地区−

菊名地区でのボーリング調査は,図2−10の位置で行った。

blB−1〜blB−4孔は,南下浦断層を高角で横断する測線上に,孔間10mピッチで配置したオールコア採取孔である。掘進長は17mとしたが,断層下盤側となるblB−3孔は,初声層の上面位置を捉える目的でGL−17mまでのオールコアリングの後,1mピッチで標準貫入試験を行いながらGL−35mまでノンコアボーリングとした。

blB−5孔は,ノンコアの透水試験孔である。

菊名地区の基盤地質は,初声層および宮田層であり,被覆層は,基盤を侵食して堆積した谷底堆積物である。

南下浦断層は,初声層と宮田層の地質境界断層でもある。当該地ではblB−2孔において,層序の逆転が認められ,南下浦断層が確認された。

菊名地区の推定地質断面図を図2−11に示す。

(1) ボーリングコアでの断層性状

blB−2孔の南下浦断層は,GL−7.53mの初声層と宮田層の地質境界として確認された。断層上盤側の初声層は,凝灰質砂岩およびパミス混りシルト岩の互層からなり,断層付近では粘土化し,青緑色を呈する。この粘土化した部分のボーリングコアは,コア形状をなさず,指先で破壊できる程度に軟質になっている。

断層下盤側の宮田層は,細砂および固結シルトの互層からなる。宮田層は,半固結状の硬さであるため,ボーリングコアで識別できる亀裂は一般に見られない。しかし,断層面であるGL−7.53mの面は,傾斜55〜60°の明瞭なせん断面として識別でき,光沢があり鏡肌の性状を示した。

(2) 地層の変形

blB−2孔の宮田層は,傾斜60°前後の層理を示した。周辺露頭における宮田層は,水平〜数度で南傾斜を示す。また,blB−4およびblB−3孔から推定される地質断面図上の宮田層は数度で南傾斜する。約60度で急傾斜する層理が観察される孔は,断層に近接するblB−2孔だけである。

後述するように,blB−2孔の急傾斜する層理は,初声層が衝上する際に形成された宮田層の変形と考えられる。

(3) 南下浦断層を境しての初声層の分布形態

blB−3孔は,断層から約10m下盤(北東)側に位置するボーリング孔である。blB−3孔では,初声層の上面位置を捉えるためにGL−35mまで増掘した。

その結果,初声層はGL−30.85m(標高−6.78m)で出現した。blB−2孔の初声層の上面位置は,GL−5.90m(標高−18.64m)である。

したがって,断層を境しての初声層上面位置は,比高で25.42m異なることになり,南下浦断層上盤側(南側)が高い。この高度差は,南下浦断層が繰り返し活動してきた累積変位である。

図2−10 地質調査位置図(菊名地区) 縮尺1:400

図2−11 菊名地区の推定地質断面図 縮尺1:200