3−2−1 地形面の記載

空中写真判読によって、秦野盆地内に分布する河成段丘面を古い方から萩が丘面、葛葉台面、岩倉面、才ヶ戸面、今泉面群及び尾尻面群に区分した(付図1)。葛葉台面〜尾尻面に関しては、従来の区分を踏襲した。萩が丘面は、平成9年度調査において新たに図示した。

なお、従来の研究においては、葛葉台面と才ガ戸面との間に、岩倉面の分布が認められている(内田ほか,1981など)。しかし、岩倉面の分布範囲は限られており、広域に対比することができなかったため、本報告書では図示しなかった。

萩が丘面:多摩下部ローム層下部層(Tll−1〜15)の時期に離水している(関東第四紀研究会,1987;図5)。Tll−9の年代(表5)から萩が丘面の離水時期はおよそ30数万年前であると推定される。

葛葉台面:葛葉第3礫層(内田ほか,1981)の堆積面で,吉沢ローム層上部(Y−1〜Y−57)の時期に離水した段丘面である。本段丘の離水時期はY−58テフラ中のDNPの年代(表5)から、約8〜9万年前と推定される。

岩倉面:TPの噴出・堆積直前に離水している。TPの年代(表5)より、岩倉面は5.2万年前以前に離水していると推定される。

才ヶ戸面:Y−80〜Y−90テフラの時期に形成された段丘面であり、Y−93期にはほぼ完全に離水している。Y−77テフラ(TPfl)とY−97’(含黒雲母グリース状火山灰)の年代(表5)より才ヶ戸面の離水時期は約4万年前であると推定される。

今泉面群:Y−93〜Y−113テフラの時期に離水した複数の河成段丘面の総称である。Y−97’とY−113の年代(表5)より今泉面群の離水時期は約3万年前であると推定される。本段丘面群は、多摩川流域の立川段丘面の主部に相当する。以後、今泉面と称する。

尾尻面群:Y−114〜Y−141テフラ期に離水した複数の河成段丘面からなる。よって離水年代は約1〜2万年前であると推定される。以後、尾尻面と称する。

このほか、完新世に形成されたと推定される河成段丘も複数認められる。これらは、相模湾岸では4面に区分されているが、秦野盆地周辺では未区分である。

表7 河成段丘の離水年代