これらの課題を検討する上では、変形帯を詳細かつ面的に観察することのできる空中写真判読が最も有効な調査手法である。縮尺1/8,000〜1/10,000程度の大縮尺の空中写真を用いれば、比高数10cm程度の起伏まで読みとることができる。
このような観点から、本調査では大縮尺の空中写真判読を行い、これをもとに地形面・変形帯を図化した(付図1)。近年、秦野市周辺では都市化が進み、人工改変によって原地形が残されていない地域が多い。このため、空中写真は、1952〜54年米軍撮影のものと1970年代の国土地理院撮影のものを使用した。写真判読は、まず4名の委員が独自に行い、その結果を委員会で検討し、統一的見解に達するようにした。
文献調査及び空中写真判読は、最終的には現地調査によって確認する必要がある。文献調査・空中写真判読によってとくに重要な地点を絞り込み、効率的かつ集中的に現地調査を行い、表層地質の性状や変形量・様式を明らかにすることを目的とした。
また秦野盆地の活断層は低角の逆断層である可能性が高く、このような断層に沿っては広範囲で地形が撓む(撓曲)のが普通である。この場合、その変形範囲を完全にカバーするように測量を行い、地形面の勾配変化を考慮して変形量を求める必要がある。この目的から、地形断面測量を実施した(図9、図10、図11、図12)。