図1−10 北東−南西方向地質断面図
これまでの研究によれば,秦野盆地には複数の活断層があり,それらが河成段丘面に変位を与えていることが明らかにされている.また,地表での変形様式は,山側への逆傾斜を伴う撓曲であることが一般的である.
このように,活断層の存在と変位様式の概要はすでに示されている.しかしながら,変位の基準となる地形面についての十分な記述はなく,断層の活動度に関する検討は乏しい.地形面の編年が不十分であると,活動度を算定することができない.また,変位の累積性は示されてはいるものの,隆起側と沈下側の地形面が同一であるかどうかの検討が不十分である.このため,記述は定性的なものに留まり,具体的な活動度については示されてこなかった.
また,どの活断層も撓曲変形やバルジ状の変形を示すので,垂直変位量は比較的長い測量断面をもとに比較する必要がある.しかしながら,これまでの研究では詳細な測量は実施されていない.撓曲変形の幅が広く変位量が小さい場合 (すなわち若い撓曲崖) には,空中写真判読では認定することは困難であると予想される.したがって,断層の正確な位置や長さに関しても再検討する必要性があると考えられる.