秦野断層・渋沢断層に関する調査
(2) 調査の目的:
神奈川県西部・秦野盆地周辺に分布するA級の活断層であり,人口密集地域を横切っている秦野断層・渋沢断層の正確な位置を特定し,活動性 (平均変位速度,単位変位量,最新活動期,再来周期) に関する評価を行い,今後の起震能力を判定することを目的とする.その成果に基づいて発生が想定される地震の時期,規模,震動を把握し,活断層に関する正確な情報を得て長期的な防災計画や地域防災計画の基礎資料として活用する.
平成9年度においては,1) 活断層の正確な位置を特定し,2) 断層変位様式と変位量及び変位の累積性を明らかにし,3) 活断層の活動度を明確にし,4) 詳細調査 (ボーリング及びトレンチ調査) を実施する地点を選定することを目的とする.
(3) 実施期間:
平成9年7月15日〜平成10年3月20日
(4) 地域活断層調査委員会の構成
委員長 太田 陽子 (専修大学文学部教授)
委 員 上杉 陽 (都留文科大学教授)
東郷 正美 (法政大学教授)
宮内 崇裕 (千葉大学理学部助教授)
渡辺 満久 (東洋大学文学部助教授)
佐藤比呂志 (東京大学地震研究所助教授)
(5) 調査担当:
神奈川県地域活断層調査委員会
社団法人 日本測量協会
(6) 調査結果の概要
今回の空中写真判読及び地形調査によって,秦野断層系を秦野,八幡,下宿,三屋,戸川の各断層に,渋沢断層系を渋沢西,渋沢東の2断層に分け,従来より高い精度で活断層の位置を大縮尺地図上に明示することができ,また変位を受けている地形の幅を明らかにすることができた.両断層系は秦野盆地と周辺の丘陵・山地との地形境界を形成するとともに秦野盆地内の人口密集地域を横切るものとして,今後の精査が必要である.八幡断層を除く各活断層は幅の広い顕著な撓曲崖,それに伴う山側への逆傾斜などを伴っている.活断層の長さはいずれも比較的短い.またどの活断層も,少なくとも最近約10万年以内における変位の累積を示し,両断層系は鉛直方向だけでもA級に達する活動度の高い断層である.真の変位量から判断すれば,A級の活動度をもつことは確実である.これらのことから判断すると,両断層系は起震断層の可能性があるものと考えられる.ただし,本断層の活動は,第四紀におけるプレ−ト境界の隣接地であり,南関東の最大規模の活断層の一つである国府津−松田断層の活動とも密接な関係をもつ可能性も高い.したがって,これらの活断層の最新活動期・単位変位量・活動間隔等を明らかにすることは,極めて重要な課題である.そのためには,両断層の位置が明らかで若い面をきり,かつ精査可能な地点を選定する必要があり,各断層系でそれぞれ1地区を詳細調査候補地点として選定した.