(1)日向地区(B1−1〜B1−5)

ボーリング調査地点を図2−4−9の平面図に、調査結果を図2−4−10の地層対比図に示す。

下位より、第三紀礫岩,武蔵野礫層,武蔵野ローム層,立川礫層,立川ローム層,黒色土層,完新世のローム質土層が確認された。また、主な鍵層テフラとして、AT(4〜8p厚,bw型ガラス),CCP15〜15',湯舟第一スコリア及び宝永スコリアが認められた。 図2−4−10の地層対比図から、以下に示す事項が確認された。

@B1−5とB1−4は、両ボーリング間で地層の連続性がないことから、基底部の腐植物の年代からみて落差はあまり大きくないが、B1−4とB1−5間の地形境界部(丘陵の西縁)に断層が推定される。

A黒色土層はほぼ2m前後の層厚であるが、B1−4だけが局所的に厚く、約4m近い。B1−4付近の東側の山際には、断面図に示すような旧谷地形が推定される。

BB1−3では、基盤岩(礫岩層)の上位のローム層(ML:全体に砂泥質)中に、傾斜60°の3条の亀裂が認められた。

CB1−1では、ATが、掘削深度8.55〜8.60mと8.65〜8.70mの2箇所(8.55〜8.60mのATは流水による2次堆積の可能性あり)で認められた。その下部の砂質ローム層(ローム質砂層)中には砂礫層や腐植質粘土層が挟在しており、主に水中堆積の様相をしている。

DB1−1,B1−2,B1−3によれば、新期ローム層(AT,CCP15〜15'を含む)及び砂礫層がB1−2とB1−4間で、ほぼ同様の層厚と傾斜角で西側に傾斜(約4.4゜)している。本来、東側に傾斜するはずの日向川扇状地堆積物及び新期ローム層が明らかに西側に傾斜していることから、この逆向きの地層傾斜は断層運動に伴う撓曲変形と推定される。

E図2−4−10左のかっこ内の数字は、B1−1〜B1−4間における、主な地層の西向き傾斜の高度差を示したものである。この図によれば、各地層の高度差は黒色土層の上面で1.26m、ATで3.36m、立川礫層(Tcg)の上面で8.64m、武蔵野礫層(Mg)の上面で11.05mである。

F立川礫層(Tcg)とAT層間の立川ローム相当層の層厚がB1−1とB1−2の間で大きく異なることから、立川礫層堆積(約3万年前)直後に大きな撓曲活動が起こったものと推定される。また、AT層堆積(約2.5万年前)以降の活動は、ゆるやかな撓曲変形に移行したものと考えられる。

これらのボーリング柱状図からは、直接、地質構造や変位量・変位速度を考察する事が困難であるため、詳細は第V章、1−5に述べる。

図2−4−9 ボーリング位置図<日向地区>

図2−4−10 地層対比図<日向地区>