(3)浅層反射法探査(S−3)

伊勢原市日向地区で実施した浅層反射法探査(S−3)の測線位置を図2−3−17に示す。

解析結果として、時間断面図(重合断面)を図2−3−18、時間マイグレーション図を図2−3−19、深度断面図を図2−3−20に示す。また、地質資料による地層境界等の解釈を加えて作成した地質構造解釈図を図2−3−21に示す。

S−3測線は、S−2測線よりさらに浅部構造を把握することを目的とし、起震2m間隔であるが、受振間隔を1mとしたインラインオフセットで展開し、60ch(バイブレータのパイロット信号に1ch使用)のデータを取得した。なお最小・最大オフセットはそれぞれ2m,60mである。

ショット記録によると、起震点より20m程度までの記録が非常に悪く、ほとんど波形の記録が読みとれない状況であった。このため静補正のうち風化層補正に必要な初動がこの範囲は全く読みとれず、本解析ではS−2測線と同様に風化層補正を行っていない。したがって、S−3測線についても、小さな反射面のずれ等は処理上での補正がされていない可能性が高いため、構造解釈は全体的な構造について行う。また、時間断面において150ms以深ではノイズが卓越し、明瞭なイベントがなく、150ms以深の記録については構造解釈上考慮しない。これらを考慮した上で以下に構造解釈を行う。

地質構造解釈図において、以下の特徴が見られ、水平距離140及び200m付近で地質構造の変換点が推定される。

・水平距離120〜140m付近を境界にして、東側が隆起(西側が沈降)した構造を示す。

・水平距離140〜200m付近には強い反射面が地表面より標高0mまで見える。

・水平距離200mより東側には標高50m以上に反射面が2枚見えるが、標高50m以下では反射面がない。

これらと周囲の地質状況(図2−2−7−1)から推定した地質境界を図中に示し、解釈を述べる。

最下部には新第三紀の愛川・丹沢層群(Tr)の基盤が分布し、その上面は西側に傾斜している。この基盤は、西側では層厚20〜30mの相模層群(SG)を間に挟み、武蔵野ローム層・武蔵野段丘礫層(ML〜Mg)・立川ローム層(TcL)及び立川段丘礫層(Tcg)に覆われるが、東側では相模層群は分布せず、武蔵野ローム層・武蔵野段丘礫層に直接覆われている。

水平距離120〜140m付近の変換点については、西側を沈降・東側を隆起させている断層の可能性があるが、解析精度上から地層を切っているかどうかの判断は困難であり、破線で表示した。立川ローム層まで変形していることから断層運動がローム堆積時にも継続していたことが推定されるが、断層が地表まで達しているかどうかは不明である。

断層運動に伴い東側が隆起し、相模層群が削剥されたものと推定される。また、武蔵野ローム層・段丘礫層は、相模層群を20m程度の層厚で覆うが、西側では上位の立川段丘礫層により削剥されているように見える。西側が沈降し、立川段丘礫層が堆積する時に削剥された可能性がある。最上部の立川ローム層は、緩く西側に傾斜しており、西側の沈降は立川ローム層の堆積時まで続いていたものと考えられる。これらの地質構造の解釈については、今後の検討課題である。

図2−3−17 探査測線位置図(S−3)

図2−3−18 時間断面図(重合断面)(S−3)

図2−3−19 時間マイグレーション図(S−3)

図2−3−20 深度断面図(S−3)

図2−3−21 地質構造解釈図(S−3)

<断層>

F :推定断層(不明瞭)

<地質>

TcL:立川ローム

Tcg:立川礫層

ML〜Mg:武蔵野ローム・礫層

Sg :相模層群

Tra:愛川層群

Trt:丹沢層群