3−3−4 出水市君名川地点の調査結果

本地点では,断層を覆う入戸火砕流堆積物の変位の有無を明らかにすることなどを目的に,ボーリング調査及びトレンチ調査が実施されている(図3−10)。

ボーリング調査結果によると,入戸火砕流堆積物は,傾斜角が約50°の平滑な面で基盤の四万十層群にアバットする形態を示し,この面は,下方で基盤の四万十層群中の断層破砕部に連続している(図3−11)。この構造は上記の宇都野々地点と類似している。

トレンチ調査結果によると,入戸火砕流堆積物と四万十層群とは,NE−SW走向で45°程度北傾斜の平滑な面(「すべり面」)で接しており,「すべり面」上盤側の入戸火砕流堆積物内には,赤褐色粘土脈(「スジ状断裂」)が多く認められた(図3−12−1図3−12−2図3−12−3図3−12−4図3−12−5)。この「すべり面」の位置とセンスは,出水断層帯の地形的位置と運動センスに一致しており,「すべり面」近傍では,一部でこれと平行な逆断層変位を示す小断層が認められた。また,いずれの「スジ状断裂」も上方に向かって凸に湾曲している。これらのことから,「すべり面」及び「スジ状断裂」は,重力下で形成されものとは考えにくく,出水断層帯の活動の現れである可能性が考えられた。

また,入戸火砕流堆積物の上位に分布する礫層a及び礫層bのうち,下位の礫層aは「スジ状断裂」に沿って落ち込んでいることが確認されたが,上位の礫層b(約5800年前)には断層活動を示唆する現象は認められなかった。

これらのことから,断層活動が入戸火砕流堆積物堆積以降,礫層b堆積以前にあったものと推定され,この場合,その時期は,約 25000年前以降,約5800年前以前となるが,確実性に乏しい。