3−8 鹿児島湾西縁断層に関する調査結果のまとめ

「鹿児島湾西縁断層」に関して,平成9年度には文献調査,空中写真判読,地表地質調査及び重力探査が,平成10年度には反射探査及びボーリング調査を実施した。これらの調査結果は以下のとおりである。

既往ボーリングの解析結果によると,文献により「鹿児島湾西縁断層」が示されている鹿児島市街地には,四万十層群上限面の高度分布から規模の大きい断層は存在しないと判断される。しかし,甲突川から鴨池港を経て南港に至る間の海岸線に沿って,四万十層群上限面は東方に向かって最大傾斜約45°,鉛直落差約200m以上を示し,この急傾斜部は NNE−SSW 方向で連続することが推定された。このことから,この四万十層群の東急傾斜部に,「鹿児島湾西縁断層」の推定が可能である。

しかし,河口部から沖合にかけて実施した反射探査結果によると,四万十層群上限面の東方への急傾斜部においては,少なくとも中部更新統以上の各層は緩い東方への傾斜を示し,鹿児島湾内においても,深度1000m 以浅の少なくとも中部更新統以上の各層は湾の中央部を軸とする緩やかな向斜構造を示しており,海岸部から湾の中央部にかけての広い範囲において,四万十層群から中部更新統に達するような断層は存在しないことが確認された。

以上のことから,「九州の活構造図」(1989)及び新編「日本の活断層」(1991)により,基盤の四万十層群上面が東方に向かって急に深くなることから推定された「鹿児島湾西縁断層」が探査深度以深に存在するとしても,少なくとも中期更新世以降における活動はなく,当該断層を起震断層として考慮する必要はないものと判断される。