3−7−1 反射断面の層序

各反射断面における地層を,反射パターンとその連続性,構造等により,上位よりA層〜I層の9層に区分した。

A層は,下位層の上限面に刻まれた谷地形を埋積し,水平に成層する反射パターンを示し,その内部構造から上部のA1 部層と下部のA2 部層に細分される(図3−27図3−29)。本層は,下位層上限面の谷地形を水平に埋積していること(図3−24−1図3−24−2図3−25図3−26図3−29),谷山ボーリング及び既存ボーリングとの対比(図3−27図3−29)から沖積層(約 1.8万年前以降)に対比される。谷山ボーリングにおける沖積層の下部層及び上部層はそれぞれA2 部層及びA1 部層に相当し,A2 部層の下部に桜島薩摩テフラ(Sz−S,1.05万年前)が挟在する(図3−27)。

B層は,沿岸部のみに分布し,乱れた内部反射あるいは無反射の状態を示す(図3−28図3−29)。本層は,この反射パターンから火砕流堆積物と推定され,火砕流堆積物と推定されるもののうち,最上位にあること,既存ボーリングとの対比(図3−29)から,入戸火砕流堆積物(約 2.5万年前)に対比される。

C層は,斜交あるいは平行層理の反射パターンを示し,一部で火砕流堆積物と推定される無層理の反射パターンが認められる。本層は,入戸火砕流堆積物に対比されるB層の下位にあり,後述の中期更新統の上部に対比されるD層の上位に位置することから,火砕流堆積物を挟在する上部更新統(約13万年前〜約1万年前),一部中部更新統の最上部と推定される。

D層は,下位層上限面に刻まれた谷地形を埋積し,C層と同様に,斜交あるいは平行層理の反射パターンを示し,一部で火砕流堆積物と推定される無層理の反射パターンが認められる。本層は,谷山ボーリングにおいて,その最上部に加久藤火砕流堆積物に対比される火砕流堆積物が挟在することが確認されたこと(図3−24−1図3−24−2図3−27)から,中部更新統の上部と推定される。

E層,F層及びG層は,いずれもやや傾斜した平行な反射パターンが明瞭な地層であり,湾の中央部を軸とする緩い向斜構造を示す。E層,F層及びG層のいずれも乱れた内部反射あるいは無反射の状態を示し,火砕流堆積物を挟在するものと推定される。

谷山ボーリングにおいて,E層とF層との境界付近には小林火砕流堆積物に,F層内には樋脇火砕流堆積物に,それぞれ対比される火砕流堆積物が確認された(図3−24−1図3−24−2)。小林火砕流堆積物及び樋脇火砕流堆積物の噴出年代は,放射年代からそれぞれ,40万年前〜50万年前程度及び50万年前〜60万年前程度とされているが,小林火砕流堆積物については,有孔虫酸素同位体比ステージ13(52万年前〜53万年前)よりも古いとする見解も示されている(町田・新井,1992)。これらのことから,E層及びF層は中部更新統の中部〜下部に,G層は中部更新統の最下部〜下部更新統あるいはそれより古い地層に対比され,G層が陸域の吉野火砕流堆積物等の古期火砕流堆積物及び花倉層に相当するものと考えられる。

H層及びI層はいずれも内部の反射面が乏しく,既存温泉ボーリングとの対比から(図3−24−1図3−24−2図3−25),H層は照国火砕流堆積物に,I層は四万十層群に対比される。