データ処理は,時間断面の作成を目的とする基本処理と,この処理により得られた時間軸上での見掛け上の記録から真の地質構造を推定するための処理の2種類に区分される。
基本処理として,@データ編集,A共通反射点編集,B振幅回復,Cデコンボリューション,D周波数フィルター処理,E速度解析,FNMO補正・ミュート,G重合を行った。
@データ編集では,ノイズの除去,不良データの除去を行った。
A共通反射点編集では,24チャンネルの場合は12トレース,12チャンネルの場合は6トレースが1つの共通反射点から反射したデータとなる。マルチチャンネル音波探査ではチャンネル間隔と同じ 12.5mで発振しており,共通反射点の間隔は 6.25m,ベィケーブル反射探査では,チャンネル間隔と同じ 10mで発振しており,5mとなる。
B振幅回復では,音波は海底面下で深度方向に向かって減衰することから,振幅の時間減衰特性を統計的に求め,この特性の逆数で振幅の回復を行った。
Cデコンボリューションでは,パルスの短縮化,多重反射の除去を可能な限り行った。
D周波数フィルター処理では,反射波形に含まれる様々なノイズを,その周波数に着目して,反射波の周波数成分のみを残すバンドパスフィルター処理を行った。
発振点−受振点間距離(オフセット距離)の違いによる走時のずれは,任意の速度値を与えて,ある共通反射点からの全ての反射波のオフセット距離をゼロにすることができる。この速度(重合速度)を求める処理がE速度解析であり,求めた重合速度により,上記の走時のずれをゼロオフセットの記録に補正する処理がFNMO補正である。この際,発生する不正な補正については,ミュートで除去した。
NMO補正・ミュートを行った各共通反射点の記録を,一つにたしあわせてG重合を行い,重合断面を作成した。この際,ランダムなノイズは相殺され弱まり,同一時間上の反射記録は強調されることになる。
真の地質構造を推定するための処理として,Hマイグレーション及びI深度変換を行った。
Hマイグレーションは,回折波等の見掛け上の位置に表示された反射を正しい位置に補正し,より正確な反射断面を得るために実施した。
マイグレーション後の時間断面を,速度解析により求めた平均的な区間速度等を用いてI深度変換を実施し,深度断面を作成した。
以上のデータ処理の例として,1チャンネルのみで記録したニアトレースを図3−16に,重合後の時間断面を図3−17に,マイグレーション後の時間断面を図3−18にそれぞれ示す。