これは、Ｌ�U段丘面基底部付近では２回、火山灰層では１回分の断層変位を受けた可能性を示している。

また、トレンチ調査によれば、Ｌ�U段丘堆積物は断層変位を受け、地表まで変形している。変形・変位した、地層の厚さから、最下部の細礫層を除きトレンチ内のＬ�U段丘堆積物は１回の断層変位を受けていると推定される。

^１４Ｃ年代測定と火山灰分析によれば、最新の断層運動によって１回分のみの変位を受けた地層は姶良Ｔｎ火山灰降灰前後の堆積物で、約１８，０００〜２７，０００年前の時代と推定される（表３−４−６）。一方、２回分の断層運動を受けた堆積物は、約３２，０００〜３５，０００年前の堆積物と推定される。したがって、最新の断層活動時期は、約１８，０００年前より新しく、１つ前の断層活動時期は、約２７，０００〜３２，０００年前の可能性が高い。

なお、本トレンチでは鬼界アカホヤ火山灰含有層が地震でできた割れ目を覆うように堆積している。これは、最新の断層活動が同火山灰降灰直前もしくは降灰後にあった可能性の２通りを示している。

トレンチ付近のＬ�U面は約４°北へ傾斜している。これをＬ�U段丘堆積物の平均傾斜とすると、撓曲した同一層が約４°の傾斜に戻った面の比高は約１．３５ｍである（図４−７−１）。断層面の傾斜が４８°とすると、傾斜移動量は約２ｍと推定される。

本トレンチでは、断層の上盤と下盤との層相が多少違うものの、ほぼ連続的につながっているので、横ずれ量は小さいものと推定される。

したがって、本トレンチにおける最新の活動による長尾断層の単位変位量は約１．８ｍと推定される。

以上をまとめると、本地点における長尾断層の活動履歴は次のようである。

（１）最新活動時期　　：鬼界アカホヤ火山灰降灰（６，３００年前）直前もしくは降灰後

（２）１つ前の活動時期：約２７，０００〜３２，０００年前

（３）単位変位量　　　：約１．８ｍ

表３−４−６ 三木町氷上田中地点における断層活動と堆積物の時代との関係

図３−４−８−２　三木町田中地点の変位量の算定方法