(1)断層
東側法面の3段目(指標杭のE11〜14付近)には、南側の三豊層群とその上位の細礫礫層(F層)と腐植質シルト層(E層)を変位させる(見かけ上南側上がり)逆断層が確認された(図3−4−6−1参照)。断層面の走向・傾斜は、N74°E・48°Sである。断層面はE1層の中央部まで確認されるが、それより上位層では、断層面に沿う変位がなくなり地層の撓曲へ移行する。E層の断層付近では、レンズ状に含まれる細粒〜中粒砂層が、断層面をはさんでS字形に引きずられている。その変位量は、断層面の上端部で約12cm、下部で約30cmである。
本トレンチのボーリングデータによると、腐植質混じりシルト層と三豊層群との境界面は、断層の南側と北側で約3mの高度差がある(南側上がり)。
また、F層はE層より上位の地層と比較して、変形が大きいことから、F層は二回分の断層変位を受けている可能性が高い。
図3−4−6−1 断層付近のE面スケッチ
2)液状化構造
西側法面3段目の三豊層群の北側付近(指標杭のW12〜14付近)には、東側法面に対応する断層面は認められない(図3−4−7参照)。西側法面の腐植質シルト層に含まれる砂層は、連続性が悪く、不規則に曲げられ、激しく流動化をうけたと推測される。一方、東側法面の砂層も流動化しているが、その程度は西側法面に比べて弱い。これは、西側法面には液状化しやすい砂層が多く分布していたためと推測される。従って、西側法面のE層中に断層面が認められないのは、断層運動により激しく流動化した結果、断層面を形成することができなかったものと推定される。
図3−4−7 流動化したW面スケッチ
(3) 地層の撓曲
E層より上位のA〜D層の段丘堆積層は、北側に向かって約4°傾斜している。しかし、断層面の延長部付近では、その傾斜が北側に向かって15〜20°と急になる(図3−4−8−1参照)。これは、断層運動により南側が隆起したため、段丘堆積層が撓曲されたものと推測される。東側法面の断層を挟んで南側と北側では、約1.35mの標高差が認められ、1回の断層運動によって受けた変位であると推測される。
図3−4−8−1東側法面のスケッチ
以上のことから、本トレンチでは、長尾断層の2回の断層活動が推察され、その活動時期は、古い断層運動はF層堆積後かつE層堆積前、新しい断層運動はA層堆積後と考えられる。