3−3−6 解析

三木町氷上石塚地点のトレンチでは、E旧河床堆積物から、D、C、およびB土石流堆積物まで、変位させている断層が確認された。B土石流堆積物中には、明瞭な断層面は認められないが、下位の地層と調和的に傾斜し、かつ砂層に乱れが生じていることから、断層運動によって変形している可能性が高い。B層の上面は食され、A層(沖積段丘堆積物)に水平に覆われている。

したがって、本トレンチにおける長尾断層の最新活動時期は、B層堆積後、A層堆積前と推定される。

火山灰分析によるとA層は、鬼界アカホヤ火山灰降灰前および後、B層は降灰前の堆積物である。したがって、最新の断層運動は、鬼界アカホヤ火山灰降灰の少し前と推定される(表3−3−4)。

また、14C年代によると、断層変位を受けた地層は11,740年B.P.より古い。これは、火山灰分析結果と矛盾しない。また、古い時代の腐植土が土石流堆積物中に取り込まれた可能性も考えると、1つ前の活動時期は、少なくとも18,920年以前であると推定される。

本トレンチにおける堆積物の変位は1回の断層運動で説明できる(図3−3−11)。すなわち、E旧河床堆積物基底面の約1.5mの高度差と、その上位の変位・変形は1回の断層運動による垂直変位で同時に形成されたと考えられる。したがって、本地点における断層変位量は、約1.5m南側隆起と判断される。

以上をまとめると次のようになる。

(1)最新活動時期  :約12,000年前以降、アカホヤ火山灰降灰以前(6,300年前)

(2)1つ前の活動時期:約19,000年前以前

(3)単位変位量   :約1.5m

表3−3−4 三木町氷上石塚地点における堆積物の時代と断層活動との関係

図3−3−11 断層模型実験による基盤の断層運動によって形成された上載地層の単斜構造(Davis,1978)