(2)断層

本トレンチでは、「E面3段目の底部付近と底面の中央部に北側の三豊層群と南側の花崗岩との境界をなす古期長尾断層」と「E面、W面、底面それぞれの南側の花崗岩中にみられる新期長尾断層」の2つ断層面を確認することができた。

(1) 古期長尾断層

古期長尾断層は、E面3段目の底部付近と底面の中央部(指標杭のEとW7〜9)にみられる北側の三豊層群と南側の花崗岩との境界断層であり、E層に覆われている(図 3−3−7参照)。断層面の走向・傾斜は、N60°E・38°Sを示す。断層付近の花崗岩部には、幅10cm以下の白色粘土化した破砕帯がみられる。

図3−3−7 断層付近の底面スケッチ

(2) 新期長尾断層

新期長尾断層は、E面(指標杭のE8〜10)、W面(指標杭のW9〜11)、底面(指標杭のEとW10〜11)の南側の花崗岩中にみられる断層である。

E面の2、3段目には、基盤の花崗岩に垂直方向で約 1.5mの変位(見かけ上南側上がり)をあたえた高角度な逆断層が存在する(図3−3−8参照)。花崗岩中の断層面の走向・傾斜は、N76°W・86°Sで、条痕の方向は、断層面に対し60°W落ちであり、幅10〜20cm前後の破砕帯(白色粘土)を伴っている。断層はE層〜B4層まで確認され、C3層より上位では、2条に枝分かれする。E層の断層付近には、幅10cm前後の細粒砂層が断層面に介在されている。なお、E層中には、この断層から派生した2条の断層が 確認される。C2層(細粒砂層)中のラミナ、C3層の細粒礫層には、断層による20〜40cmの食い違いが認められ、B2層、B1層には明瞭な断層面は確認できないが、B3〜B1層は下位の地層と調和的に傾斜しているため、断層変位によって撓曲している可能性がある。A1層は、B1層以下の傾斜した地層を不整合に覆ってほぼ水平に堆積している。

図3−3−8 断層付近のE面スケッチ

W面の2、3段目には、花崗岩中の高角度な逆断層が存在する(図3−3−9参照)。花崗岩中の断層面の走向・傾斜は、E−W・87°Sで、幅10cm前後の破砕帯(白色粘土)を伴っている。断層はE層〜C3層まで確認され、E層中より上位では、2条に枝分かれする。E面と同様に、C3層の細粒礫層には、断層による20〜50cmの食い違いが認められ、E層の断層付近には、幅約10cm前後の細粒砂層が介在される。

図3−3−9 断層付近のW面スケッチ

底面には、花崗岩中の高角度な逆断層が存在する(図3−3−10−1参照)。花崗岩中の断層面の走向・傾斜は、N88°E・87°Sで、幅20cm前後の破砕帯(白色粘土)を伴っている。断層面の条線は縦ずれが卓越し、右横ずれ成分を伴うことを示している。また、断層付近には、幅10cm前後の砂礫層(E層)が、レンズ条に挟まれている。

図3−3−10−1 断層付近の底面スケッチ

以上のことから、本トレンチでは、長尾断層の最新活動時期は、B1層堆積後かつA1層堆積前と考えられる。