ボーリング調査による長尾断層の浅部地下構造は、反射法地震探査による地下構造と調和し、本断層は地下10m以深では花崗岩と三豊層群との境界断層となっている。
本低断層崖をはさんだボーリング調査によれば、ほぼ低崖付近から南へ約45°傾斜する断層が確認された。 本断層は、地表付近では、LV段丘堆積物上部のシルト質砂層に約1.0m、LV段丘堆積物基底に約1.6mの高度差を与えている。この変位は、以下の理由からLV段丘堆積物堆積中に1回の断層変位で形成された可能性が高い。断層面の傾斜を考慮すると、単位変位量は、約2mと推定される。
@地表およびLV段丘堆積物上部のシルト質砂層の高度差は、LV段丘堆積物基底の高度差より約0.6m小さい。
Aシルト質砂層は断層をはさんで、なめらかに連続し、層厚の変化が小さい。
Bこれに対して、LV段丘堆積物下部の礫層は断層の下盤側が上盤側より、約0.5〜0.6m厚い。
Cこれは、LV段丘堆積物下部礫層堆積中に断層運動があった可能性を示している。
D上部のシルト質砂層は、断層運動後低断層崖を侵食堆積した旧鴨部川河床堆積物を覆うフラッドロームと考えられる。
断層運動後に堆積したLV段丘堆積物上部のシルト質砂層(S1層)からは鬼界アカホヤ火山灰分が検出されるが、下部礫層(S2層)からは同火山灰は検出されない(表3−2−4)。したがって、当地点における、長尾断層の最新の断層活動は、鬼界アカホヤ火山灰降灰の以前の可能性がある。
しかしながら、14C年代測定によれば、断層変位を受けた礫層(S2層)からは、2,230±40年B.P.、断層運動後に堆積したシルト質砂層からは990±50年B.P.の14C年代が得られている。これによれば、長尾断層は2,230年〜990年前に活動した可能性が考えられる。ただし、14C年代の若返りの可能性があることとボーリングによる判定のため、トレンチ調査結果と併せて検討する必要がある。
以上をまとめると、次のようになる。
(1)最新の断層活動:アカホヤ火山灰降灰前もしくは2,230年〜990年前
(2)単位変位量:約2m
表3−2−4 長尾町塚原地点における堆積物の年代と断層活動との関係